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 誰も友達も知り合いもいないこの土地にやって来て、私は人には言えない仕事をしている。

 もう6ヶ月になった妊婦とあきらかにわかるお腹を抱えて仕事している。

 父親はいるけど、いない。

 彼には妊娠したこと言わずに夜逃げするようにしてこの街へやって来たから。

 彼は独身だけど、子供できたことを喜んでくれるかはわからなかった。

 私の方も彼のことは好きだったけど、結婚とかは考えられなかった。

 お互い誰とも結婚なんてする気がなかった。

 結婚に夢を持てなかった。

 家庭環境のせいにばかりもできないけれども、結婚とはつらく耐え忍ぶものという暗いイメージができあがっていた。

 私も彼も「結婚=幸せ」と思えない人種だった。

 似たもの同士でつきあっていて気がラクではあったのだけれども、計算違いに子供ができてしまった私はかなりあわてた。

「親にばれる前に逃げなくちゃ!」

 そう思った私は誰にも言わずに逃げてきてしまった。

 妊娠したことわかったら、私はあらゆるところでカードを作った。

 クレジットカード、サラ金のキャッシュカ-ド、限度額いっぱいまで作れるだけ作ってから会社辞めた。

 サラ金は最初に申し訳程度借りてすぐ返して利息の付き具合を様子見した。

 本当は、その時点で借りる必要性はなかったのだけれども、借りる必要性のある時にすぐに借りられるように準備した。

 無職じゃカードは作れない。

 一応貯金はあるけど、引っ越してすぐに働けるかどうかはわからず不安だった。

 つわりとかがあるかもしれないし、妊娠初期は流産しやすいとかいうから、身体に負担のかかるような仕事はできない。

 私は一人で産む気でいた。

 親にも彼にも友達にも誰にも言わずに遠くに行って産む気でいた。

 一人で育てられるかは自信はなかったけれども、とりあえず産んでしまえば、いくらなんでも、

「殺せ」

だの、

「捨てろ」

とまでは言われないと思う。

 私は彼や親に、

「堕ろせ」

と言われるのが怖くて逃げて来てしまったのだ。

 怖くて怖くてちゃんと話すことができなくて、こんな遠い街まで逃げてきてしまった。

 最悪の場合、出産してから働けるようになるまで、貯金が尽きたら借金してでも食いつなぐ気で金策だけはなんとかしておいて……。

 私は、こういうところには妙に頭が回る。

 短期間でバタバタと計画的夜逃げをやらかして私はこの街へやって来た。

 コンビニで目についた求人情報誌全部買って、とりあえず入居したウィークリーマンションの部屋で雑誌めくって働けそうな仕事を探した。

 最初は、自宅で無理なくできるので、テレフォンレディーやチャットレディーのバイトをした。

 びっしりパソコンに向っていないとある程度の収入にはならない上に、かなりストレスがたまった。

 でも、お酒を飲むわけにもいかず、ストレス過食に走った。

 おまけに、私のつわりは食べていないと気持ち悪くなるというタイプのつわりで、起きている間はひっきりなしに何か食べるようになってしまっていた。

 バイト代だけではやっていけず、貯金を切り崩しながら生活した。

 5ヶ月に入って、医師に、

「もう少し動いた方がいいですよ。妊娠中毒症予防のために太らないように気をつけて下さい」

と言われて、私はまた求人情報誌を買いこんできた。

 けれども、すでに妊娠前の体重から10キロも太ってしまっていた私は、誰が見ても妊婦とわかるような体型になっていたため、普通の仕事はみんな断られてしまった。

 今はお酒飲めないから水商売はムリだし……。

 悩みながらも高収入バイトの雑誌を見ていたら、気になる求人広告を目にした。

『妊婦さん大募集!身体に負担をかけるようなサービスは一切ありません』

といった文句が目に入ってきた。

 それは、マニア向けのデリバリーヘルスの求人だった。

 風俗というのはやっぱり気持ちの上では抵抗感はあったのだけれども、できる仕事ならなんでもやっていかないとこの先やっていけないとも思った。

 出産後、子供抱えて仕事していかなければならないけど、自分一人で暮らしてきた今までよりも間違いなくお金も手間もかかる。

 仕事の選り好みなどしている場合ではなかった。

 私は、面接に行ったその日から仕事をしてしまった。

 世の中には、不思議なことに妊婦や母乳の出る女性とのプレイを求める男性がいる。

 店の方では、そういったお客さんたちのことを『マニア』と言う。

 お客さんが、何が良くて妊婦との触れ合い求めるのかは私にはわからない。

 ただ時間いっぱい私のお腹を撫でていたおじさんもいた。

 妊婦の身体を見て触ること自体に満足感を得る人が多いようだった。

 だから、風俗店でもまるっきりの素人で妊婦の私はほとんど何もサービスすることなく、ベッドの上に横たわっていればよかった。

 私は、1週間働いてみて出産直前まで『妊婦プレイ』で稼げそうな気がしたので、店のマンション寮に入居させてもらった。

 ウィークリーマンションの家賃は高かったけれども、夜逃げしてきてしまった私には保証人頼める人がいなくて、普通のマンションやアパートは借りることができなかったから……。

 出産後も、身体が回復したら、今度は『母乳プレイ』の方で仕事できることを聞いていたから、子供が乳離れする頃まではそれで稼げる。

 私が入った店はいくつか違った趣向のデリバリーヘルス店を系列で経営していたので、身体の状態によって違う趣向の店で働くことも可能だった。

 私は、いつでも出かけられるように支度しておいて寝て寮待機した。

 仕事が入ったら寮の前まで迎えに来た送迎の車に乗りこんで、お客さんの元へと運ばれて行った。

 次の指名予約が入っているとちょっとの間だけ事務所の待機部屋で待機して他の女の人たちと会話した。

 妊婦や産後の人ばかりだったから、いろいろと出産関係の情報や母子家庭の手当てなどについて話を聞けた。

 夫のいる人もいたけれども、シングルマザーも何人かいたから、話聞いてくるだけでも参考になった。

 だけど、私は基本的には寮待機していた。

 6畳ほどの狭い部屋に何人も待機しているとなんだか息苦しかったから。

 普通の体型の人であっても狭い部屋に複数の他人と一緒というのは、落ち着かないような気もしたけど、お腹の大きい妊婦や産後の太り気味の体型の女性ばかり何人もいれば、なおさら暑苦しく息苦しい感じがする。

 寮とはいえ、電化製品も生活用品も一式そろった1ルームのマンションの部屋で、一人で寝ている方が気が休まった。

 仕事内容はきつくはなかったけれども、やはりお客様相手の仕事だから気はつかった。

 仕事中も待機中も気をつかっていたら、神経やられてしまう。

 仕事の方はなんだか不思議な感じだった。

 指名してくれるお客さんの中には、

「赤ちゃん産まれたら着せてやって」

とベビー服をプレゼントしてくれる人もいた。

 次第に大きくなっていく私のお腹をうれしげに撫でていたおじさんは、いつもわざわざ買って用意していたであろうフルーツをおみやげに持たせてくれた。

 風俗のお客さんのはずなのに、なんだか親戚のおじさんやおじいちゃんみたいに私の身体をいたわって心配してくれていた。

 私は泣いてしまった。

「なんで私なんかにこんなに親切にしてくれるんですか?」

と泣きながらいつも指名してくれるおじさんに訊いた。

「おじさんはね、子供欲しかったんだけど奥さんが流産してから子供産めなくなっちゃってね。奥さんのことは愛してるんだけど、あの時の子供が順調に育っていったらどんな風にお腹がふくらんでいったんだろう?と思ったら見て触ってみたくなったんだ。でも、こうやって大きくなっていくお腹見て触って中で赤ちゃんが動いてるのを感じたら、自分の子供じゃないけど孫くらいにはかわいくなってきて、あんたが元気な赤ちゃん産むのが楽しみになってきた。あんたがいう親切というのは自分の楽しみでやっていることだから」

というおじさんの答えを聞いて、私はようやく自分がとんでもないことをしてしまったことに気がついた。

 自分一人でなんとか産むことばかり考えて、もしかしたらうれしそうに私の大きくなったお腹を優しく撫でてくれるこのおじさんみたいに、私が赤ちゃん産むのを楽しみにしてくれたかもしれない人たちから逃げ出して来てしまったのだ。

 何も言わずに逃げて来てしまった。

 今頃になって後悔しだした。

 とんでもなく身勝手なことをしてしまった。

 妊娠したこと言ってみて、

「堕ろせ」

と言われたらそれから逃げればよかったのだ。

 おバカ過ぎる自分に涙が出た。

 でも、もうこの状態で飛行機乗って移動するのは難しい。

 帰れない。

 予定通りにいけば来週末に私は出産する。

 遠距離移動するのは今は無理。 

 それでも、仕事終わったら、電話してみようと思った。

「私、もうじき赤ちゃん産みます」

 いきなり失踪した私がそう言ったら、彼も親もなんと言うだろう?

 だけど、私はもう何言われてもいいやと思った。

 誰に何言われたって、私の赤ちゃんはもうじき産まれてくるのだから……。(Fin)

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