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VOICE~涙~

 大好きだったラルクの曲が聴けなくなった。

 泣いてしまうから……。

 ボーカルの声が大好きだった彼の声にそっくりで、歌声聴いただけで涙が溢れてきてしまう。

 彼の声を聴くことはもう二度とないのだと思うと、彼とよく似たあの声を聴くとどうしようもなく悲しくなってしまう。

 似ていても、あの声は、彼の声ではない。

 本当に聴きたい声は、もう聴くことはできない。

 あれから私は部屋に引きこもってしまった。

 仕事は辞めた。

 食事はほとんど出前。

 テレビは見ないし、ラジオも聴かない。

 CDも特定のアーティストのものしか聴かない。

 ラルクのCDは箱に詰めて押入れの奥に封印した。

 捨てることは出来ないけれども、今の私には聴くことが出来ないから。

 結婚資金として貯めていた貯金食いつぶして、一年以上引きこもり生活を続けた。

 通帳の貯金残高見て不安を覚えるようになった頃には、、さすがにこのままではヤバイと思い仕事を探し始めたけど……コンビニに求人情報誌を物色しに行っただけで、もうダメだった。

 私はコンビニで号泣してしまった。

 奇しくもその時、コンビニ内にはゆうせんでラルクの曲がかかっていた。

 私は、声を抑えることも出来ずにコンビニを出て道端にしゃがみこんで号泣しながら、まだ外で働くのは無理かもしれないと思った。

 以前の仕事を辞めた理由は、条件反射的にラルクの曲を耳にした瞬間に泣いてしまうような状態に陥ってしまったからだった。
 
 職場に流れているゆうせんは切れないわけで、涙線に特殊プログラミング組み込まれてしまったような状態の私は使いものにはならなかった。

 ショップの店員が接客中にいきなり泣きだし、仕事にならないなんて論外だ。

 私は貯金残高気にしつつ、ネットで探した自宅で出来る在宅バイトをいくつかかけもちして食いつないでいくことにした。

「それでダメなら、餓死してしまえばいい」

 気がついたら、私は何度も思ったその言葉を口に出して言っていた。

 健康でお金が手元にある人間が、自室で餓死するのはなかなか難しい。

 何度も餓死を目指して断食を試みたけれども、食欲に負けて食べてしまった。

 でも、お金がなくなって食べる物がない状態で過ごせば、今度こそ餓死出来るかもしれない。

 本気で死にたいのなら、他にも方法があるのだろうけど、私には本格的に自殺を実行するほどの気力もなかった。

 もしも立ち直ることが出来たとしたら、がんばってまた外で仕事しようという思いはちょっとはあったけど……。

 お金がなくなって、食べ物もなくなって、食欲さえもなくなって、そのまま餓死してもかまわないとも思っていた。

 けれども、なんとか在宅バイトで食いつなぐことが出来てしまった私は、トータル三年近くも引きこもり生活をしてしまった。

 そんなある日、私は、突然、黒いスーツを着こんで外出した。

 きれいなお花が供えられている彼のお墓の前で、

「一度も会いに来てくれなかったね…私は、化けて出てきて欲しかったのに……」

なんて恨み言など言いながら手を合わせた。

 今日は彼の三回忌。

 どうやら彼はしっかり成仏してしまったようだ。

「私もそろそろ外に出て働かなくちゃ……」

 そう思いながら、彼のお墓を背にして帰ろうとしたら、

「がんばって」

という彼の声が聞こえたような気がして私は振り向いたけれど、彼は姿は現してはくれなかった。

「そらみみでも、うれしいよ」

 そうつぶやいてぎこちく笑った私はもう泣かなかった。(Fin)
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Theme : ショート・ストーリー * Genre : 小説・文学 * Category : ショートストーリー(性と心の悩み、SM、BL、ML、JUNE)
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