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 子供の泣き声が次第に弱々しくなってきた。

 苛立ちよりも、私の中には不安感の方が大きくなってきていた。

 隣の部屋の母親は、確実に三日は帰って来ていない。

 なぜわかるかって?

 答えは、私はこの三日間一睡もしていないし、外出もせずに部屋にひきこもっているから。

 体調が悪いというよりも患っている鬱病による不眠が酷く、眠れもしないのに布団の中でごろごろしている、今そんな状態。

 仕事は先日辞めたばかり・・・。

 睡眠不足によるイライラ感やら頭痛が酷く、何をしようにも、何も手に付かないし、やる気も起きない。

 その上、隣の部屋の住人が引っ越して来てからというもの、毎日子供の泣き声に悩まされ続けている。

 だけど、文句の一つも言ってやろうと、一週間前、隣の部屋の前まで行ってみた私はびっくりしてしまった。

「なに、これ・・・」

 ドアの形そのままに端の部分すべてにガムテープが貼られていた。

 あきらかに尋常ならざるものを感じた。

 夢中でガムテープを剥がして、ドアのチャイムを鳴らしてみたけれども、返事は無かった。

 ドアノブをガチャガチャと回してみたけれども、鍵がかかっていて開かなかった。

 仕方なく自分の部屋に戻った。

 その後、また赤ちゃんの泣き声が聞こえ始めたので、私が行った時には子供は眠っていたのだろうと思った。

 実は、部屋の前まで行ってみる前に通報はしていた。
 
 最初は、子供の泣き声がうるさくて、イライラして通報しただけだった。

「マンションの隣の部屋の子供の泣き声が止まないんですけど・・・児童虐待?とかしてるかもしれません」

と警察に電話したら、

「ああ・・・そういうのは、児童相談所の方へ連絡して下さい」

と言われ、

「あ、あの・・・児童相談所って・・・連絡先は?」

と私が訊かなかったら、あの時対応した警官は児童相談所の電話番号を私に教えることなく電話を切っていたことだろう。

「ちょっと待って・・・」

と言われ、その後、告げられた番号をメモした私は、すぐに児童相談所へ電話した。

 けれども、あの後、一度も警察も児童相談所員も訪ねて来てはいない。

 角部屋にある隣の部屋へは、私の部屋の前を通らなければ行けないわけで、おそらく通常児童相談所員が訪問するであろう時間帯は、私は起きているし、ほとんど外出もしていないから、来たらわかるのに・・・。

 数日後、児童相談所へまた電話した。

「あの・・・先日お電話した者なのですが・・・隣の部屋の母親が帰って来なくて、中で子供がずっと泣いているんですけど、そちらで保護とかしていただけないのでしょうか?」

と私が言うと、

「いつ行ってもご不在のようですし、オートロックで中には入れず、お部屋の前まで行けないものですから、集合ポストの方にお手紙入れさせていただいてます。保護者の方と連絡がつかないことには、こちらも対応しかねますので・・・」

という事務的な返答が電話口から響いた。

「その保護者が帰って来ていないから、子供を保護すべきなんじゃないんですか!?」

 おもわずイラッとしてそう怒鳴ってしまった私に、

「こちらと致しましては、所定の手続きが・・・」

とマニュアル通りのことしか言えない児童相談所員に、

「そちらは、部屋の中で幼い子供たちが餓死するかもしれないというのを見捨てるんですね!」

と吐き捨てるとガチャリと家電の受話器を乱暴に置いて私は電話を切った。

 そのまま隣の部屋へと走った。

 ドアにはまたガムテープが貼られている。

 私が剥がしてから、一度は母親が帰って来たらしい。

 なかなか剥がれないガムテープをドアの縁から剥がすと、ドアチャイムを鳴らしてみた。

 中からは赤ちゃんの泣き声は聞こえているのに、子供の返事はない。

 確か乳児の他に4、5才くらいの女の子がいたはずなのに・・・。

 嫌な予感がして、あわてて自分の部屋に戻った。

 何か破壊力のある物を求めて部屋中探し回った私は、金槌握りしめて隣の部屋のドア前へとまた走った。

 ドアノブ目がけて振りおろし、ドアの破壊を試みたものの、思ったようにうまくいかず、部屋に戻った私は、窓を開けてベランダに出てみた。

 非常時用に隣とは薄い板で仕切られているだけのベランダを見て、

「ここだ!ん、待てよ・・・これは器物損壊か!?いや・・・緊急だからいいんだって!!」

とやけくそで仕切りの板を金槌でぶっ叩いた。

 今度は簡単に壊れて、いともたやすくそれは取り除くことが出来た。

 そうやってベランダ伝いに隣の部屋の窓の前まで行ってみた私は愕然とした。

 窓もドア同様に内側からガムテープでしっかりと目張りされていたのである。

「これじゃ、窓から外へ助けも呼べないじゃない・・・」

 カーテンがかかっているから中の様子はわからないけれども、赤ちゃんの泣き声は聞こえる。

 以前と比べると弱々しく、気にして聞いていなければ気づかないほど小さな泣き声ではあるけれども・・・。

「えいっ!」

 おもいきって窓ガラスに金槌を振りおろした。

 ガシャーンと割れた窓ガラスを窓枠から取り除くと、ガラスの破片で怪我をしないように靴を履いたままで隣の部屋の中へと入ってみた。
 
 ガラスが割れた瞬間に中の異変には気づいてはいたのだけれども、カーテンを押しのけて見てあまりの惨状と異臭に私は吐きそうになった。

 部屋中ゴミが散乱していて、食べたまま置かれていた複数のカップ麺の空き容器からは腐ったような臭いがしていたし、溜めこまれていた使用済みの紙おむつから漂う赤ちゃんのうんちとおしっこの強烈な臭気は息をすることすら躊躇われるほど凄まじい悪臭を発していた。

 鼻をつまみながら近づいて行くと、泣いている赤ちゃんに寄り添うようにして寝ている女の子が、布団の上でぐったりしているのが見えた。

「警察!じゃなくて・・・え~と、この場合は・・・救急車!110番じゃなくて、116でもなくて・・・119だ!!」

 パニくりながらも、救急車呼んだ後、私は救急車に同乗して行った病院から警察へと連行された。

 器物破損と不法侵入の罪に問われるらしい。

「子供は助かりましたよ。それでも、きまりだもんで、調書は取らせてもらいますから」

と申し訳なさそうに頭のてっぺんが薄くなっている刑事はそう言った。

 最初に通報した時に、警察の方で様子を見に行ってくれていれば、今頃私は警察署内の取調室で取り調べを受けることなどなかったはずなのに、どうしてこんなことになってしまったのだろう?

 私は、ただ、あの閉ざされた空間の中から子供たちを助け出したかっただけなのに・・・・・・。(Fin)



出られぬよう扉にテープ張る 大阪幼児遺棄
http://news24.jp/articles/2010/08/02/07163960.html
この事件をヒントに書いた小説です。
こういう事件って、結局、軽犯罪くらい犯してでもなんとかしなくちゃ!と行動してくれるような強引な他人様が周囲にいなかったら、助かるものも助からないんじゃなかろうかと思ったわけです。
マニュアルで動いてるようなお役所仕事じゃ踏み込めない部分があるのはわかるけど、それじゃ生きてるうちに救われない子供たち、見捨てられた子供たち、見殺しにしてるも同然じゃないですか?
通報はされてるのに、児童相談所が実質何の助けにもならなかった事実がある。
そういう部分を皮肉って小説にしてみました。
「女心のガイドブック」菊池乱
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EDIT [2010/08/03 04:43] ショートストーリー(風刺小説) コメント(-)
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