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「そうですか…すぐ行きます」
と内線電話の向こうの橘さんにそう答えると、僕はすべてのレッスンや講義を終えて自室に戻っていたが、医務室めがけて走りだした。
 長いリノリウムの廊下を走り抜け、職員用のエレベーターで医務室のある階にたどりつくまでの間最悪な気分に陥っていた。
 橘さんから聞いたレンタルから戻ってきたわんこのケガの状態的にどんなプレイで責め立てられ、嬲られたのかくらいは想像出来てしまったからだった。わんこがされたことは…プレイとは言い難かった。SMプレイというよりもむしろ拷問だの暴力の類だった。
 通常は、消えない傷痕や火傷痕が残らないようなプレイであれば、ドールはSMプレイOKということにはなっている。が、治療しても完治しないような痕や障害が残るようなプレイ、及び命にかかわるような危険行為は規約違反とされている。
 クラブ側としては、大事な商品をキズモノにされては困るからである。
 特殊な存在であるドールは大量生産出来ないから、そうそう簡単に替えはきかない。
 クラブの方ではケガの程度によって客に慰謝料請求したり、違約金請求したりしているが、今回のは慰謝料以外に違約金請求しなければならないだろう。
 息を整えてから医務室へ入って行ったら、
「ワクチンや足りない薬品類を取りに一度病院へ戻りますから、その間に洗浄お願いしますね。傷口に擦り込まれている土砂をボディブラシかたわしででも除去するように大量の水で洗い流して下さい。破傷風には消毒は無意味ですから」
と聞きなれたここの嘱託医である女医の声が聞こえてきた。
 医務室から出て行こうとした女医は、出入口付近で立ちつくしていた僕をちらりと見ると、
「ちょうどよかった。適任者が来てくれて…洗浄お願いしますね。泣きわめいても押さえつけて傷口えぐるようにしてしっかり洗ってあげないと、あの子破傷風で死んじゃうかもしれませんからね」
と女医は言った。
 このドS女医が!僕も人からドSと呼ばれる変態だが、こいつは性格にも問題あるに違いない。
 わんこの生死がかかっているとまで言われたら、泣いて暴れて助けを求めて懇願してきても、押さえつけて容赦なく傷口えぐるようにしてでも洗浄してやるしかないじゃないか?
「薫先生、来ていきなりであれなんですけど…これから洗浄お願いします!店長と二人で介護用のバスルームでNAOちゃん洗ってあげて欲しいんです。傷口にまだ土砂が入り込んでる状態なので……」
と青い顔して言う橘さんについて行ったら、既に店長がパンツいっちょでわんこを浴槽に入れていた。
 イマドキめずらしい白ブリーフだったが、店長はMなのでまあある意味正装だな…と僕は思ったりしていた。
 どうやら今意識が無いようでわんこは目を閉じたままだった。
 僕は靴と靴下を脱ぎ、ズボンの裾をまくり、シャツの袖を肘上までまくり上げたら、
「新品のボディブラシと歯ブラシありますか?」
と橘さんに訊ねた。
「ありますけど…なんで歯ブラシがいるんですか?」
「細かい傷に入り込んでる土砂は歯ブラシの方が除去しやすいんです」
「あ、そうですよね!すぐ持ってきます!!」
 橘さんは、急いで備品庫の方へ向かって走って行った。
 僕は浴槽のぬるま湯に浸かっているわんこのケガの状態を確認し始めた。傷は浅いが擦り傷が多く、傷口には土砂が入り込んでいる状態で見るからに痛そうだった。青黒く変色している箇所も何ヶ所もあった。おそらく客に殴る蹴るされたのだろう。顔も腫れている。
 鋭利な刃物で切られた切り傷よりも、意外とこういう擦り傷の方が痛かったりする。そこにろうそくでもたらしたのだろう。火傷で水ぶくれになっているところもある。
 火傷のレベルとしてはいずれも1度の火傷。ダメージくらってるのは表皮であって真皮は無事だろう。火傷による細胞壊死の心配はなさそうだ。
 が、普通の野外プレイではこんな風に傷の中に土砂が入り込むことがないことを僕は知っている。
「これはひどいですね。故意に傷口に土砂を擦り込んでいる。的確な治療をせずに放置すれば破傷風で死ぬ可能性もあるというのに……」
と怒りを抑えられずにそう僕が言ったら、
「そうですね。傷自体は浅いですから、治療すれば傷痕は残らないはずなのですが、お客様がこのプレイをしてから三日経過しています。破傷風の潜伏期間のことを考えるとこれから発症する恐れはあるわけで、処置が間に合わなかったら最悪の事態もありえたわけです。慰謝料と違約金はしっかり請求しますよ。これじゃドール卒業するまでの間、もう客は取らせられませんからね」
と店長は憤慨した口調でそう言った。
 店長が怒っているのは、クラブの商品であるわんこがドール卒業するまでもう客を取らせられないような状態のキズモノにされてレンタルから返却されてきたことに対してだろう。
 橘さんが持ってきたボディブラシと歯ブラシを使って、店長と二人がかりでわんこの傷口に入り込んでいる土砂の除去作業をしている間、
「ぎゃーーーっ!イタイ!いたいっ!やめて!やめてーーーっ!」
と目を覚ましたわんこは悲鳴をあげながら涙と鼻水を垂れ流していたが、店長は痛がって暴れるわんこを押さえつけていたし、僕は傷口を念入りに洗浄していた。ボディブラシや歯ブラシで傷の中に入り込んだ土砂を除去すべく傷そのものをゴシゴシ擦ってやっていたのである。
 わんこの方は洗浄の間は、生き地獄だったと思う。こういった傷口の洗浄作業は、病院なら局部麻酔を打ったりする。それを一切麻酔無しで体中にある傷の洗浄をやられたのだから、おそらく失神ものの痛さだったのではないかと思われる。
 その後、裏表しっかり洗い残しが無いか確認してからは、浴槽からt溜め湯を抜いてしばらくの間シャワーを浴びせ続けた。
 破傷風菌は通常地中で芽胞という形で土壌に広く分布している。これは消毒液では殺菌できない菌で、人間の方が死んでしまうほどの高温加熱しなければくたばらない非常に熱に強い厄介なヤツでもある。
 とりあえずの処置としては、傷口をよく洗浄して大量の水で洗い流すくらいのことしか出来ない。
 あとはワクチンに頼るしかないわけなのだが、もしも発症してしまっていたとしたら集中治療室で治療出来る病院へ入院させて治療を受けさせた方がいい。
 しかし、ここのクラブの特異性から入院させるのはどこの病院でもいいということはない。店長はいったいどうするつもりでいるのだろう?あまり外部の医療機関は使いたくはなさそうなのだが……。
 浴槽から上げて、シャワーで仕上げのすすぎをしてからタオルで拭いて、前開きのネグリジェを着せてやったが、泣き喚き疲れたわんこはぐったりとしていた。
 これでは、僕一人では無理だっただろう。
 店長がわんこの体を支えたり押さえつけていてくれなかったら、洗ってやることも困難だった。
 医務室のベッドに連れて行き寝かせた後、
「何か食べるか?喉は乾いてないか?」
と訊ねてみたが、わんこは首を横に振っただけで目を閉じてしまった。
 眠ったわけではないようだが、今は話もしたくないのだろう。
 身支度を整えた店長は、
「それでは、私はこれからお客様のところへ行って来ますので、後のことはよろしくお願いします」
と橘さんと僕にそう言うと医務室から出て行ってしまった。
 早速、違約金と慰謝料の話をしに行ったのだろう。
 入れ違いでここの嘱託医である女医が戻ってきた。
「現時点では発症はしていないようなので、破傷風トキソイドワクチンの接種をしておきます。これは二週間後以降にもう一度打たなければ免疫がつきません。それ以前に発症した場合は集中治療室の設備がある知人の病院へ移します」
と女医は説明し、わんこの腕に破傷風ワクチンの注射を打った。
「先生、今夜は泊って行っていただけるんですよね?」
と橘さんが不安そうにそう言ったら、
「申し訳ないのですが、明日は朝から病院の方の通常診療がありますので…」
と女医は宿直は無理であることを伝えてきた。
「あ、カテーテル入れて行きますけど、薫さん、出来ましたよね?というか導尿得意ですよね?看護師資格持ってないのが不思議なくらいに」
とにこにこしながら僕の顔をのぞき込んで言うのはやめて欲しい。
 医療関係者や自己導尿を必要としている患者やその介護者でもないのに、導尿得意、カテーテルならまかせろって状態であるということは、SMプレイで医療プレイを得意としていることがばればれなのである。
「しばらく安静にしておいた方がいいので、カテーテルの消毒と交換お願いしますね。傷の痛みを訴えてきたら、座薬入れてあげて下さい。鎮痛剤の多用は避けて下さい」
といとも簡単に素人にお願いしてしまうこの女医は、僕がまだ女の姿でSMクラブの女王様してた頃、同じ趣味のSMサークルに参加していたので、僕の腕前は知っている。
 こんなんでいいのか?と疑問に思いながらも、
「ゲイは身をたすくって本当ですね~」
などとふざけたことを言いながら女医が帰って行くのを僕はうんざりしながら見送った。
 後に残された困った顔した橘さんが、
「夜間の付添いどうしましょう?ついていてあげたいんですけど、私、カテーテルは無理です~」
と言ったものだから、
「夜は僕が付添いしますし、昼間も空き時間に様子見に来ます。レッスンや講義中は何かあったら内線で呼び出して下さい」
と言ってしまった。
 その日から、わんこの看護の日々が始まった。(続く)



 
2009年6月5日携帯配信開始!
小説「僕のアニキはサイボーグ」菊池乱

『どこでも読書』(ソフトバンク用入口)から飛べない方は、携帯メニューの電子書籍から「どこでも読書」→「検索」→著者を探す「菊池乱」の順で検索していただければ作品みつかります。
「僕のアニキはサイボーグ」は人の生死について菊池なりに考えてみたSF作品です。先日可決成立した改正臓器移植法は「脳死は人の死」ということを前提として来年施行に踏み切るそうです。それについて皆様はどう思われますか?
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