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 私はとうとう悪魔に魂を売ってしまった。

 身売りしてしまった。


 風俗店で働くのでもないし、売春をするわけでもないのだけれども、半年の契約期間中は私の身柄は拘束されることになる。


 まさか、愛人斡旋している会社が実際に存在するとは思ってもみなかったし、あんな有名な成人女性向の漫画誌にああいった内容の広告が堂々と載っていたことにも驚いた。


 あくまで、高い入会金と紹介料を支払った男性会員に女性を紹介して会わせるところまでしかその会社はしていなかったけれども、どういった内容の契約を結ぶかは本人同士の話し合いによって決まる。


 実質は、期間限定の愛人契約をするようなもの。


 正直な話、性的嗜好が特殊な私に勤まるものなのかどうかはわからなかった。


 でも、私は非常に切羽詰っていた。


 多重債務で自転車操業し続けていた私はもう限界ラインに来ていたのだ。


 支払日になると、


「今月も全ての支払いが出来た!」


という喜びすら感じるようになっていた私は完全に借金ループにはまってぐるぐる回っていた。


 借金を返すために高額時給バイトを掛け持ちし、借金を返すために返しては借り、返しては借りの繰り返しをしていた。


 いつしか期日までに無事に支払えたという達成感から、快感のようなものすら感じるようになっていた。


 私はすでに心を病んでいたのだと思う。


 それでも、ついにどうがんばってお金の循環をさせてみても支払いに間に合いそうにないことに気がついた私は、雑誌の広告で見た番号に電話してしまった。


 ラッキーなことに斡旋会社から紹介された男性会員は、偶然私と性的嗜好の合う人だった。


 その男性会員については斡旋会社から告げられた、


「48才会社役員男性」


 それ以外のことは何も私は知らない。


「半年間、私がプレイしたいという時には、いつでもどこででもプレイのお相手をしていただける方を求めていたのですが、あなたは今までの生活を全て捨てて来ることが出来ますか?」


という問いかけに私は一瞬迷った。


「もしもあなたが今までの生活を全て捨てて来て下さった場合、契約金額は…・・・」


 私のことを値踏みするかのように見据えてからその男性会員が言った金額はとんでもない金額だった。


 半年でその金額はありえない。


 たぶん、ソープの高級店でNo.1になれたとしてもそんな金額は半年では絶対に稼げはしないと思う。


 私の借金全額返済してもまだまだ余る。


 なんでそんな大金をたった半年の契約で払おうとこの人は言うのだろう?


 不審には思った。


 けれど、私はもう全ての借金をイッキに支払ってすっきりしたくなっていた。


 借金を期日までに返せるということに快感を覚えるようになってしまった私の脳は、おそらく返済時にドーパミンやら脳内エンドルフィンでも大量放出しているのだろう。


 全部借金一括返済出来たら私の脳はどれだけの快感を感じるのだろう?


「今までの生活全て捨てます」


と私は答えてしまった。


 たかが半年、人生の中の空白の期間が出来たってかまやしないと思えるほどの高額報酬に目がくらんで私は契約することに決めてしまった。


 私の借金を全て支払える分と今住んでいる部屋を引き払ってレンタル物置に半年間荷物を預かってもらうためのお金を先払いしてもらうことを条件に…・・・。


 準備が出来たら旅行カバンとハンドバッグに詰められる程度の必要最低限の荷物を持って私は迎えの車に乗った。


 その黒塗りの車が外車であることしか車に興味のなかった私にはわからなかった。


 契約主は、3LDKのマンションの部屋を私のために用意していた。


 完全防音で1室は私の寝室。


 あとの2部屋はプレイルームとして設備が整っていた。


 コスチュームや下着、お道具の類もそろっていた。


 生活していくのに必要な物も用意してくれていた。


「半年だけの道楽です」


と契約主はそう笑って言ったけれども、今の不景気なご時世にこんなお金のかかる道楽をする人がいるなんて私には信じられなかった。


 囲われた私は一人で外出することは禁じられた。


 食事の用意や買い物は通いの家政婦さんがしてくれた。


 携帯は電源OFFにして契約主に預けてある。


 身内や友人知人には、私は海外への仕事に出かけているということにしておいて、半年間連絡を断つことにした。


 契約主は自分の素性を知られたくないようで詮索することや、私が今の生活やプレイのことを誰かに話すことも禁じている。


 あれだけの金額支払われたら言われなくとも守秘義務くらい守る気でいたんだけどね、まあ、いいか。


 よっぽどバレたらまずい立場の人なのだろう。


 余計なことは訊かないし、家政婦と迎えの運転手以外と顔を合わすことがない生活しているのだから、当然契約主が話されて困るあのことは誰にも話すことはない。


 プレイする日は、私の住んでいる部屋に契約主がやってくることもあれば、車で迎えの者がやってきて、どこかに連れて行かれることもあった。


 契約主が私に求めたプレイはSMプレイだった。


 私は女王様で契約主がM男だった。


 SMクラブに行くのがはばかられるような立場の人だったとしたら、専属女王様を囲ってプレイした方がいいのかもしれないけれども、一般人レベルの浪費家の私には理解の出来ない桁違いのお金の使い方を契約主はする。


 プレイは、飽きてしまわないように私はノートにその都度どのようなプレイをしたのかを書き綴って、同じプレイの繰り返しにならないように色々と工夫をした。


 でも、プレイをしていくうちに契約主がストーリープレイを好むことに気がついた私は、様々なストーリーやシチュエーションを思い浮かべてはノートに書き綴り、次のプレイの用意をした。


 契約主がフェティシズム的服装倒錯症であることにも私は気づいていた。


 これは、服装倒錯者であるトランスベスタイトとは異なる。


 トランスベスタイトは、自分と異なる性別の衣服を着用し「女装」や「男装」することを楽しみはするけれども、性的には基本的に異性を求めるノーマルな男女である。


 ただし、カミングアウト出来ないGID(性同一性障害)の人たちがまぎれていたりもするのであやしい分類でもある。


 それに対して、フェティシズム的服装倒錯症の場合は、性的興奮を得るために異性の衣服を着用したりはするが、性欲喚起と明らかに結びついていることと、いったんオーガズムが起こり性欲喚起が止めば、衣服を脱いでしまいたいという強い欲望が起こる。


 私は、男が女物の下着をおかずにするのに自分で履くか履かないかくらいの違いにしか思わなかったけど、それで興奮するのならばと契約者に女物の下着や衣服を身につけさせてプレイしたりもした。


 女物の下着を身につけたままイッてしまうと理性が戻って、契約者は激しく羞恥して縛られていても一刻も早くそれを脱いでしまいたがった。


 あまりハードなプレイはしなかったけれども、私も契約者もプレイルーム内の雰囲気作りや互いの身につけるコスチュームにはこだわった。


 契約者は次から次へとコスチュームや下着を購入してきた。


 私が身につける下着はフランスレースの高価で見た目が美しい物を契約者は好んだ。


 契約者が好んで身につけたのは、サテン生地の感触がつるつるした物だった。


 ストッキングも好んだ。


 私にはガーターベルトでつるし上げるストッキングを履かせておいて、契約者はパンティー履かずにじかにパンストを履いてみたりもした。


 ストッキングを履いた足と足をすり寄せてやったり、足の裏で強弱つけて踏みにじりながらすりあげてやると契約者の硬くなったモノから分泌された透明な液体で私の足の裏は濡れてしまった。


「女王様の御み足をおまえの汚らしいもので汚すなんて、なんていけない子なのかしら?」


 私がそう言いながら睨みつけてやると、契約者はおびえた表情で私を上目づかいに見上げる。


「お舐め!」


と私が口元まで足の裏を伸ばして命じてやると、契約者は一生懸命舌を伸ばして舐めてきた。


 自分の分泌した液体を舐め取っている。


 自分がサドだからなのかもしれないけれども、私には自分の下半身から分泌したものを舐めるなどといったことは汚らわしい行為に思えるしそんなことはしたくないし、命令されてもしないだろう。


 でも、そういう屈辱的で汚らわしい行為に興奮してしまうマゾが存在していることは知っているし、現に今私の足を舐めている契約者はそういうM男だ。



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