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 2X60年、衆参同時選挙の結果を目の当たりにして、

「日本はブラックバスに乗っ取られた。在来種は負けた」

と釣り好きな祖父はがっくりと肩を落としてそうつぶやいた。

 移民党の大圧勝により政権交代。

 昔、日本人と呼ばれたこの国の国民とは、顔立ちの特徴も、肌の色も、髪の色も、目の色も異なる政治家が多数議席を獲得し政権獲得したことを、昭和生まれの祖父はそう例えた。

 祖父は昔の日本民族の純血種だから、ショックだったのかもしれない。

 昔は「日本は単一民族」なんて間違った発言をした政治家がいたくらい、黒い髪、黒い眼、黄色人種の中でも特にきめの細かい美しい肌を持った日本民族がたくさんいた国だったのだ、日本という国は。

 古い映画を見るとびっくりする。

 顔をよく見なければ良く似た姿の俳優や女優ばかり。

 体格も似ているとうっかり見間違えたりする。

 だけど、最近はそういう人の方が少なくなってきている。

 日本民族の純血種である祖父の孫である僕は、日本民族の純血種ではなく、中国人の母を持つ中日カクテルだ。

 昔はハーフだのクォーターだの言ってたのを、今はカクテルって言葉に置き換えている。

 まるで「欠けている者」のように表現されるそれらの言葉が差別用語とされたからだ。

 今の日本にはいろんな国のカクテルな子供たちがたくさんいる。

 でも、僕のように日本人の父と中国人の母が国際結婚して、最初から日本人として生まれてくる子供自体は昔とそう数は変わらないらしい。
 
 それよりも、父親に認知してもらって、後から子供に日本国籍を取得させる外国籍のシングルマザーが増えたから、その子供たちの方が圧倒的に多い。

 ちなみに、そういう子供たちは日本人になった年がみんなバラバラだったりする。

 0歳児で日本人になる子もいれば、法律ギリギリの20歳で日本人になる子もいる。

 2009年1月に施行された改正国籍法によって、外国人との間に結婚しないで設けた婚姻外子が認知されれば、20歳未満であれば日本国籍を取得出来ることになってから、あっという間に日本は変わったそうだ。

 昔は与党の参議院議員だったという祖父は、今でも、

「あの法案は通すべきではなかった」

としきりと悔しがっている。

 DNA鑑定を義務付けない認知によって、血のつながらない父親の認知でもって日本国籍を得た子供たちはたくさんいる。

 当時は「偽装認知」と騒がれていたらしい。

 偽装認知の手口は最初のうちはお粗末なものだったけれども、次第にアリバイ工作なども巧みになり、DNA鑑定さえ要求されなければバレない巧みな偽装認知が横行するようになった。

 挙句の果てには、日本国籍を持つ子供が欲しい外国人女性に日本人男性が精子提供し、誕生後認知するというビジネスまで現れた。

 改正国籍法が成立した年は、奇しくも派遣切りや正社員の大量解雇を大企業が決行した大不況の年で、金になる上、法律上犯罪にも該当しない「精子提供認知ビジネス」に加担する失業男性が後を絶たなかったから、それによって生まれた子供のおかげで第三次ベビーブームが起こった。

 精子提供認知ビジネスで出来た子供ならDNA鑑定までされても「生物学的に父親である」ことが証明される。

 ただし、認知しても日本の法律では認知した父親に扶養義務を強制出来ないため、日本は大量な孤児を収容するための乳児院やら孤児院を次々増設するはめになった。

 なぜなら、子供に日本国籍を取得させた後、日本に子供を置き去りにして母国に帰る母親が続出したからである。

 日本でまともな教育を受けさせるため子供だけ置いて行く貧しい国の母親たちが後を絶たない。

 外国人の母親がいなくなっても日本国籍を持つ子供たちは日本国が守ってくれるからだ。

 だいたい小中学生くらいの子供に「おまえの将来のため」と言い聞かせて置いて行くケースが多い。

 そして、子供が日本国内で就職したら再び外国から母親がやって来る。

 日本で日本人として働いている子供に食わしてもらうのが目的だったりする。

 あるいは、母国への仕送りを約束させ帰って行く。

 日本円で仕送りしてもらえれば、物価の安い母国でなら日本では大人のおこづかい程度と認識されるような金額で食べていける。

 新たに日本人になった子供たちは早いうちに元々の日本人と結婚して、次々子供を産んだけれども、その繰り返しの結果、日本民族の純血種は激減した。

 そして、偽装認知や精子提供認知ビジネスで日本人となったカクテルな子供たちのその子供たちは、政財界に進出していき、ついに政権奪取にまで至った。

「ブラックバス、ペットとして輸入された様々な外来種は、短期間で増殖して日本の生態系を壊した。人間も同じか?」

 ひとりごとをつぶやき皮肉な笑みを浮かべた祖父は、自室の壁に設置されている大型ディスプレイの電源をリモコンで消した。

 テレビとパソコン一体型のディスプレイで、テレビとネットのニュース両方確認していた祖父は、

「疲れた。寝る」

と言ってベッドの中に潜り込んでふて寝してしまった。

 ふて寝したくもなるだろう。

 今までの政権交代とまるで意味が異なる今回の政権交代で日本がどうなるかなんて目に見えている。

 利権政治と言われてたものが今度は外国に渡るのだ。

 移民党の政治家たちのそれぞれの母国に有利になるような政治がおこなわれるだろう。

 自分を産んでくれた母や祖母の母国である国に貢献すべく彼らは日本でがんばってきたわけで、日本という国が利用しやすくなればそれでいいのである。

 日本という国に対する「愛国心」のない日本人たちは、日本という国の生態系ともいえる社会体制をどう変えていくのだろう?

 祖父は移民党嫌いである。

 でも、日本文化を愛し日本に留学して父と出会い恋愛結婚した中国人の母は、実は祖父のお気に入りだったりする。

 祖父いわく、

「日本人よりも日本人らしい」

のだそうだ。

 日本文化大好きな生粋の中国人である母の方が「日本人よりも日本人らしい」とは、なんとも皮肉な話である。

 2x60年、祖父が亡くなったこの年、北海道州制で統治されていた北海道が事実上破綻し、一度は返還された北方領土や樺太も一緒にという条件付きでロシアに売却され、日本の誕生をイメージして描かれた平山郁夫の日本画と同じように、日本地図からは北海道と北方領土と樺太が消えた。

「借金島国の日本は次はどの領土を売るんだろう?沖縄か?」

 そうひとりごとをつぶやく僕の皮肉な笑みが窓ガラスに映って見えた。

 その表情はいつかの祖父に似ていた。 

 日本は本当に人間まで外来種に負けその生態系はすっかり変わってしまった。

 今やアジアで「最も治安の悪い危険な国」とまで呼ばれるようになった日本から、海外の治安のいい国へ脱出していく富裕層は珍しくはない。

 国には税金はがっぱり持ってかれ、海外からやってくる出稼ぎ強盗団には金目のものを持ってかれ、誘拐犯には誘拐された挙句の果てに身代金だけ取られて殺される。

 そんなことはまっぴらごめんという平和に安全に暮らしたい富裕層は日本を見捨てていく。

 そして、高額納税者たちが、海外での永住選んだ結果、国の税収は減り赤字財政は領土を切り売りしなければならないほど深刻な状態にまで陥った。

 日本がぼんやりしている間に他国に占領されてた竹島なんてとっくの昔に売られてる。

 国債は頻繁に発行されているが売れない。

 国債は利率はいいけど、国が国民から借金するために発行される債券だ。

 だから、金を貸す相手である日本国に、返済能力があるかどうかも危ぶまれる状態の今、国債を購入するバカはほとんどいないのである。

 国債発行しても国民がそっぽを向くようになったんだから、国家的には末期症状だ。

 日本という国家自体の破綻も近いかもしれない。

 それでも、日本で生まれ日本人の家族に愛されて育った僕にはここは祖国だし、自分は日本に骨を埋める日本人であるという自覚があるから、日本民族の純血種ではなくてもこの国から逃げ出したりはしないと思う。(Fin)


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