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『鬼畜の戯言』菊池乱☆出版社の倒産により現在電子書籍配信ストップ中

秘密クラブからレンタルされる豊胸女装美少年レンタルドールシリーズ(SF/SM/BL/ML/JUNE/GID/女装/TS/etcな小説)言論と表現の自由を守ろう!不当なネット規制反対!不適切な規制は解除すべきです!!

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2015年12月24日

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レンタルドールKEI~プロローグ~ 

「おかあさん、ピンクのクレヨンかって」
とぼくが言ったら、
「圭ちゃん、違う色も使いましょうね。ピンクのクレヨンがなくてもおえかき出来るでしょう?男の子なんだから、お花やお姫様ばかりじゃなくて、車とか他にも描きたいものあるでしょう?」
とおかあさんは言ってピンクのクレヨンは買ってくれなかった。
「ピンクのクレヨンないとぼくおえかきできないのに……」 
とベソかいてたら、
「つかわないから、ケイちゃんにあげる」
とまったく使っていないピンクのクレヨンをおねえちゃんのレイちゃんはくれた。
 ふたごのおねえちゃんのレイちゃんは、女の子だけどお花やお姫様の絵は描かない。
 おともだちの顔や手や足とかばかり描いている。
 肌色の減りが早いけど、なくなれば替わりに青や緑や黄色を使う。
 レイちゃんは、人を描きたいだけで色にはこだわらない。
 だけど、ぼくはピンクが一番好きな色だから、ピンクのクレヨンがないと描けない。
 ピンクのチューリップとピンクのドレスを着たお姫様の絵を描くのが大好き!
 だから、ピンクのクレヨンがないと困っちゃう。
 でもね、おかあさんも幼稚園の先生もぼくにお花やお姫様以外のものを描くようにって言うの。
 どうしてそんなこと言うの?
 ぼくは大好きなものを描いてるだけなのに……。
 ある日、
「ぼくね、このえにかいたおひめさまみたいになりたいの」
って言ったら、
「圭ちゃんは男の子だからお姫様になんかなれないのよ!」
とさっと顔色を変えたおかあさんに怒鳴りつけられた。
 あの時のおかあさんの顔ものすごく怖かった。
 ぼくは大好きなピンクのドレスを着たお姫様にはなれないのかと思ったら、なんだかとても悲しくなったし、大好きだったおかあさんにそんな風に怒鳴られてとてもショックだった。
 そして、悪夢が始まった。
 おとうさんの知り合いの道場で、ぼくは空手と合気道を習わされるようになった。
 イヤでイヤでたまらなかった。
 いたくてつらいことばかり。
「男なんだから、シャキッとしろ!男らしくなれ!」
と言われるのがものすごくイヤだった。
 同じ顔したふたごのおねえちゃんのレイちゃんは、ピンクの服着てピアノのレッスン。
 うらやましくてたまらなかった。
 レイちゃんの着ているかわいいピンクの服が。
 男の子のぼくはつらいことイヤなことばかり。
 ぼくは、レイちゃんになりたかった。
 同じ顔でも女の子と男の子では大違い。
 ぼくは、ただピンク色が大好きで、お姫様になりたかっただけなのに、
「圭ちゃんは男の子だからお姫様にはなれないのよ」
と幼稚園の先生にもおかあさんにも言われた。
 ぼくは、あの時怒鳴ったおかあさんの顔と声を思い出すと怖くて怖くて、そして嫌われたくなくて、必死でおとうさんとおかあさんの言う通りにした。
 でも、合格点はもらえなかった。
 ぼくは男の子失格だった。
 小学校に入ってテストで100点取っても、好きなものを好きと言い、本当のことを言うぼくは否定され続けた。
 おとうさん、おかあさん、どうしたらぼくのことほめてくれるの?
 学校のお勉強はレイちゃんと同じくらいできているはずなのに…どうしてレイちゃんと同じようにはほめてくれないの?
 そのうち、苦しくなったぼくは好きなものを好きと言うのをやめた。
 ただ、言わないだけ。
 今もピンクが一番好きな色だし、お姫様になりたいとかレイちゃんになりたいとかいう気持ちは変わってないけど……。
 ねえ、おかあさん、笑ってよ。
 おねがいだからぼくから目をそむけないで!
 ぼく、もう、おかあさんが怒ること言わないから。

 お母さんに笑いかけて欲しくて、僕は7才の時から仮面を被った。
 大好きなものも本当の自分の気持ちも心の奥に封印して……。
 そして、僕は心が欠けたまま成長していった。
 本当の自分に戻るまでの間、ずっと。(続く) 



これは、レンタルドールYUKIシリーズでご主人様の愛人として登場した坂口圭の幼少期のお話で、「レンタルドールKEI」連載本編の前置きエピソードです。
元は原題「ピンクのクレヨン」という短編でした。
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Posted on 2008/07/23 Wed. 14:11 [edit]

『レンタルドールKEI』連載中  /  TB: --  /  CM: --

レンタルドールKEI 1 

 最後の病院の日。
 帰りになんとなく近くの喫茶店に入った。
 まっすぐ部屋に帰る気になれなかったから。
 ぼんやりしているうちに、目の前に置かれたコーヒーは口をつける前に冷めていった。
 卒業前に体の傷は完治した。
 なんら問題ない状態。
 それでも、まだどこかが痛いような気がするのはなぜ?
 あんなこと誰にも言えない。
 思い出しただけで苦しくなる。
 呼吸が苦しくなる。
 痛み、それを上回る恐怖感……屈辱。
 僕は、穢され恥辱にまみれた。
 男なのに強姦された。
 しかも、相手は一人じゃない。輪姦…だった。
 知人による犯行だから、刑事告訴は簡単だ。
 犯人の身元はわかっているし、病院で診断書も取れるから。
 強姦じゃなくて傷害罪で刑事告訴することは可能であることもわかっている。
 なぜなら、男が男に犯された場合は、強姦致傷罪は適用されないから。
 戸籍上の性別が男女の組み合わせでなければ、どんなに酷い性的暴行事件だったとしても同性間では「強姦」はありえないことになっているこの国の法律。
 そんなものを学んだ僕の大学生活はなんだったんだろう?
 同じくそれを学んだ連中に僕は犯された。
 でも、あんなことは誰にも知られたくないと思ったら警察には行けない。
「死にたい……」
 気がついたら、あの日から何度も思ったことを声に出してつぶやいてしまっていた。(続く)



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Posted on 2008/07/23 Wed. 14:18 [edit]

『レンタルドールKEI』連載中  /  TB: --  /  CM: --

(R18)レンタルドールKEI 2 

「すました顔して実は好き者なんじゃないのか?坂口のこんなに色っぽい顔を見れるとは思ってもみなかったぜ」
「男に掘られて何度もイッたのにまだ勃つんだ?坂口って根っからの淫乱?」
「実は、男と経験あるんじゃないのか~?」
「坂口じゃなくてカマ口ってか?そりゃあ、いい!ここは突っ込まれるための口ってわけだ」
 口々にそう言って愚弄したやつらは、僕を犯しながら嘲笑った。 
 さるぐつわかまされて縛られていた僕には反論の余地無し。
 僕はどうしてこんな目に遭っているんだ?
 気乗りしなかったけど、どうしてもと頼み込まれて、人数合わせにコンパに出たとこまでは覚えている。
 そんなに酒に弱いわけでもなかったはずなのに、途中からものすごく眠くなって記憶がない。
 気がついたら、コンパの男のメンバーたちに犯されている最中だった。
「これ、入るかな?」
「それはさすがにきつくね~か?たぶん裂けるぞ」
「いいって、どうせカマ口だし」
 そんな無責任なこと言ってやつらが突っ込もうとしているモノを見た僕は、
「んんん~~~!!」
 やめて~~~!!と怯えて鼻声で叫んだ。
 なんでそんなものがそこにあったのかわからないけど、腕くらいの太さのディルドーを無理矢理突っ込まれた。
 激痛で失神。
 裂けて生暖かいものが流れ出していた。
 失神した僕は、頬をひっぱたかれて起こされた時、まだその地獄が終っていないことに気がついた。
 血まみれになったそこに、
「カマ口のケチャマン、血ですべりがよくなっていい具合だぞ。おまえらもやってみたら?」
と笑いながら突っ込んでたやつは、
「おまえ、悪趣味過ぎ。さすがにそんだけ血が出てたら萎えるって」
と他のやつらに言われていたけど、
「そうか?オレ、めっちゃ興奮してるんだけど」
と愉快そうに答えた。
「おまえみたいなのを鬼畜っていうんだよ」
と誰かがぼそっと言ったら、
「輪姦に加担した時点でおまえらみんな一蓮托生だからな!こういうことは後腐れなく済まそうと思ったら、徹底的にやって、やられたやつには誰にも言いたくないと思うような目にあわせておくのが得策なのさ。ほら、フェラ写真撮っとくぞ!」
と僕に突っ込んだままそいつは言った。
 さるぐつわはずされたらすぐに、他のやつのが口の中に押し込まれてきた。
 喉の奥まで一気に突かれて、ぐえっと吐きそうになった。
「ほら、写真撮っておけよ!」
 何度かフラッシュがたかれた。
 デジカメでおぞましい写真を撮られてしまった。
「歯立てるなよ!噛みついたりしたらさっきの写真を大学の掲示板にでも貼り付けてやるからな。『淫乱ホモ坂口圭のフェラ写真』とかいう解説付きでな」
と脅されて無理矢理舐めさせられた。
 涙がこぼれ落ちた。
 苦しいからなのか?
 情け無いからなのか?
 どっちかよくわからないけど、僕は嫌々男のモノを舐め続けた。
 みじめだった。  
 なぜか、
「もうお姫様にはなれない」
とも思った。
 それは子供の頃にあきらめたはずなのに……。
 穢されてしまった僕には、実はそれが一番悲しいことのように思えていた。(続く)

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Posted on 2008/07/23 Wed. 14:27 [edit]

『レンタルドールKEI』連載中  /  TB: --  /  CM: --

レンタルドールKEI 3 

 目が覚めたらやつらはいなかった。
 ホテルのベッドの上で、僕は、血まみれのシーツにくるまれていた。
 血の臭いとともに洗濯用漂白剤に似た鼻にツンとくるあの独特の体液の臭いに吐き気がした。
 栗の花の香りと小説では表現されることがある。
 でも、僕にはどうしてもあれは漂白剤の臭いとしか思えない。
 何度も中に出された。
 顔や体にもかけられた。
 口の中にも出されて無理矢理飲み込まされた。
 最悪な臭いと味。
 あれが自分の体からも出るのかと思ったらぞっとした。
 さっきから室内の電話が鳴っている。
 だけど、僕は動けなかった。
 もう、縛られてはいない。
 でも、体が動かない。
 まったく力が入らない。
 電話は鳴り止んだ。
 そして、チェックアウトの時間になってコールしても応答がないものだから、不審に思って様子を見にやって来た若いフロント女性はマスターキーでドアを開けたら、
「きゃぁーーーっ!」
 室内の惨状見て甲高い声で悲鳴をあげた。
 しばらくしたら、走り去った彼女の替わりに30代半ばくらいの男性スタッフがやって来た。
「お客様、動けますか?救急車をお呼びしましょうか?」
と訊ねられて、
「動けません。でも、救急車は嫌です」
と僕は答えた。
「よろしければ、私の車で病院までお送りいたしますが?」
「あ、でも……」
「失礼致します」
 いきなりくるまっていたシーツを剥ぎ取られて僕は焦って叫んだ。
「や…見ないで!」
 男に犯された痕跡の残る体を見られたくはなかったのに、
「かなり出血していますね。太い血管が切れていたりしたら大変です。病院へ行きましょう!」
とまだ出血が止まらないそこを見てその男性スタッフは冷静に言った。
 バスタオルを腰に巻いた上からバスローブを着せてくれ、抱き上げて車まで運んで後部座席に横になれるように乗せてくれた。
 そのラブホテルの近くにある小さな泌尿器科の病院に運び込まれた僕は、細長い診察ベッドにうつぶせに寝かされ、腹の下に枕とタオルを差し込まれて恥かしいところがよく見えるようにされて診察と治療をされた。
「うちは泌尿器科で肛門科じゃないんですけどね~」
「いやぁ、このへんだと先生が一番の名医だってみんな言ってますよ」
「ま、そっちも得意だから別にかまわないんですけど」
 事情を小声で話していたホテルマンと女医の話声の会話内容が後半ちょっとだけ聞こえてきた。
 ぼんやりとそれを聞いていた僕は、この場合は肛門科に行くのが適切らしいということを知った。
 まさかこんなところをケガするとは思ってもみなかったから、泌尿器科にかつぎ込まれてもなんの疑問も持たなかった。
「これは、ひどい…診断書書きましょうか?」
とまだ若そうな女医に診察中にそう言われた。
 僕が男に輪姦されたことはどうやら見抜かれているようだった。
「いえ、いりません」
と僕は答えた。
 傷害罪で刑事告訴したって、男に犯されたことが公になれば、僕の方が法廷でセカンドレイプにあうことになる。
 法廷でのセカンドレイプが怖くて、強姦や強姦到傷罪で訴え出ることが出来ずに泣き寝入りする女性がたくさんいることを僕は知っている。
 勇気を出して訴え出た女性が法廷でどんな目にあうのかも……。
 怖い。
 名誉棄損や侮辱に相当するのではないかと思われるほどの言葉を加害者側の弁護人も検事も口にした。
 被害者の人権は法廷で守られない。
 強姦された被害者に、
「濡れましたか?」
「感じましたか?」
「イキましたか?」
「当日の服装は露出が多く、まるで男性を誘っているようだったとか。実は、あなたの方が誘ったんじゃありませんか?」
 そんな質問が次々投げかけられる。
 僕は、法学部に入ってからその実情を知って弁護士にも検事や裁判官にもなりたくないと思った。
 世間に最高学府と呼ばれている大学の法学部に行って、
「司法試験は受けない」
と言ったらあきれられた。
 僕より成績下のやつらが司法試験受けることは知っていた。
 それでも、嫌なものは嫌だった。
 あの法廷の嫌な空気を思い出すと生理的嫌悪感を感じた。
 見学に連れて行かれた時、僕は被害者の女性と共鳴していた。
 共感じゃなくて、もっと切実な何かを感じ取って同調してしまっていた。
 まさか自分自身がその被害者になるとは思ってもみなかったけど……。(続く)


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Posted on 2008/07/23 Wed. 20:27 [edit]

『レンタルドールKEI』連載中  /  TB: --  /  CM: --

レンタルドールKEI 4 

「私が『もういいですよ』と言うまでは治療に通って下さいね」
と女医に念を押されて、
「はい」
と答えて完治するまで何度もホテルから運び込まれたあの泌尿器科の病院へ通院した。
 何度も死にたいと思ったけど、実行する気力すらなかった。
 人は、あまりにもショックな出来事に直面すると死ぬ気力すら失うことがあるのだと僕は知った。
 多量な出血で貧血になっていたせいもあって、くらくらしてほとんど寝て過ごした。
「玲ちゃんが旅行中でよかった」
 僕が自分以外の人間のことを気にしたのは、その時、友達の卒業旅行に便乗して海外旅行に出かけていた双子の姉のことだけだった。
 僕と同じ大学に進学した玲ちゃんは、医学部だからまだ卒業じゃないけど、数少ない学内の仲の良い女友達と一緒に旅行に行きたかったらしい。
 僕にはそんな友達はいない。
 試験前にノートのコピー欲しさに群がってくるハイエナどもは友達なんかじゃない。
 おもわず膝を握り締めてしまってズボンにしわをつくってしまった。
 あ、いいな~と思う人がいても自分から友達になる方法を僕は知らなかった。
 気がついたら目が追ってた。
 あれは、なんだったんだろう?
 ドキドキしていた。
 胸が…息が…苦しくなるほどに……。
「エヘン、エヘン……」
というわざとらしいマスターの咳払いで我にかえった。
 ようやく治療が終った僕は、喫茶店で考え事をしていてずいぶんと長居してしまったようだった。
 冷めたコーヒーを飲み干して喫茶店を出たらもう暗くなっていた。
 なんとなく、僕は道草をした。
 新宿のこのあたりは歩いたことのない場所だ。
 大学合格して玲ちゃんと二人で上京しても僕は大学と本屋と近所のスーパー以外へはあまり出かけなかった。
 たまに、玲ちゃんに連れ出されてどこかへ遊びに出かける以外は……。
 せっかく親元離れて自由になれたんだから、遊び歩くことだって可能だったはずなのに、僕にはそれが出来なかった。
 僕は、あの家から離れてもやっぱり『籠の鳥』だった。
 どこにも飛んでは行けない。
 そう思い込んでいた。
 初めて歩く街で、
「ねえ、きみ、いくら?」
と最初にそう若い男に声をかけられた時、それが何を意味しているのか僕はとっさに理解できなかった。
「ホテル代込みで二万でどう?」
という男の台詞の内容でようやく僕はこの新宿二丁目という街で「体を売っている男」と勘違いされてしまったらしいことに気がついた。
 あわてて首を左右に勢いよく振ってその場を立ち去った。
 でも、次から次へと男に声をかけられた。
 一刻も早くそこから逃げ出したいという思いと、どうせ穢されてしまった体なんだから、こんな体売ってしまおうか?という衝動に駆られてそこらへんをあてどもなくうろついた。
 どれだけ売れば何も感じなくなる?
 心も体もなにも感じなくなってしまえばいい。
 でも、なんだか安い金額で売るのは嫌だ。
 許せない。
 ちょっとは残っていたプライドが邪魔して、
「10万でどうだ?」
と言ったちょっといいスーツを着ていた初老の男を振り切った直後、
「1000万でいかがですか?ほんの手付金ですが」
と声をかけられ思わずそう言った男の顔を凝視してしまった。
 僕はからかわれているのだろうか?
 それとも、一晩体を売るのではなく外国にでも売り飛ばされてしまうのか?
「私は何もしません。食事しながら詳しくビジネスのお話をしたいのですが、食事だけでもお付き合いいただけませんか?もちろん、私のおごりです」
と言った男は年齢不詳というのがぴったりな感じの本当にいくつなのかわからないような顔立ちをしていた。
 どこにでもいそうなありふれた個性とか自己主張とは程遠い顔は、同じようなメガネかけてると似て見えるっていうのとはちょっと違うような気もしていた。
 ところが、あやしげなことを言っているのに不思議とその男自体には胡散臭さが感じられなかった。
 にわかに空腹感を思い出した僕は、
「食事だけなら……」
とうっかり答えてしまった。(続く)


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Posted on 2008/07/23 Wed. 20:58 [edit]

『レンタルドールKEI』連載中  /  TB: --  /  CM: --

レンタルドールKEI 5 

 どこに連れて行かれるのかもわからず、男の後をついて行くのは正直不安だった。
 男のくせしてあんな目にあった後なものだから……。
 だけど、素面で一対一なら負けはしないと思う。
 子供の頃から大学受験前まで習わされた空手も合気道も黒帯だ。
 相手が上手なら逃げるくらいの狡さも僕は持ち合わせている。
 大丈夫だ。
 ぐっと握りしめた拳の中はじっとりと汗に濡れていた。
「こちらのレストランでよろしいですか?」
と言ってエスカレーターへ乗り込んだ男は、意外なことにデバートのレストラン階に降り立った。
 ホテルのレストランよりは、今の僕には安心出来る場所だけど、法外な金額のなにやら怪しげなビジネスについてこんなところで話しても大丈夫なのだろうか?
 中華のお店の奥の席に案内されて、
「お好きなものをいくらでもどうぞ」
と男に勧められたけど、僕が頼んだのは坦々麺だけだった。
 ろくに食べずに貧血で寝てばかりいたから、食が細くなっていた。
 男はいろいろ頼んだ。
 そんなに一人で食べられるの?
 ひとごとなんだけど気になった。
 食事しながら男が話した内容は、僕の想像を絶するものでびっくりした。
「僕にニューハーフになれとでも言うのですか?」
 焦って僕がそう言ったら、
「いいえ、一時的に美しきアンドロギュノスになっていただきます。つくりものですが」
「え!?」
 驚いた僕はおもわず手に持っていた箸を取り落としてしまった。(続く)


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Posted on 2008/07/24 Thu. 00:00 [edit]

『レンタルドールKEI』連載中  /  TB: --  /  CM: --

レンタルドールKEI 6 

「プラトンのいうアンドロギュノスを完璧な形でつくることは出来ません。しかし、美少年に豊胸で乳房をつくり、両性具有的な『ドール』にすると、男でも有り女でも有るような不思議な魅力と美しさが備わります。そして、そういった魅力に魅了されるお客様が存在しています。会員制の当クラブには、一般人のお遊びとは桁違いの金額を惜しむことなくお支払いになり、それぞれの願望をドールに託す会員様がいらっしゃいます。あなたさえその気になれば、一年で億単位の収入を得ることも可能ですよ」
という男の話は奇妙ではあったが、なぜか胡散臭さは感じられなかった。
 おもいっきり胡散臭い内容だというにも関わらず、不思議なほどに男の話し振りには説得力があった。
「実は、先程のあなたの行動をずっと見ていました。あなたには、あの街は似合いませんよ。もったいない」
と男に言われてギクリとした。
 決心つかなかったし、安い値段で自分を売るのも許せなかった。
 僕を犯したやつらが払える程度の金額で売るのは絶対に嫌だった。
 どうせ売るならやつらには手が届かないほどの法外な金額で売る方がいい。
 それが、僕の最後の意地とプライドだった。
 すーっと深く息を吸いこんだ後、
「卒業式の後からなら働けます」
と僕は言ってしまった。
「卒業式?高校生ですか?」
「いえ、大学生です。もうじき卒業しますが」
「え?大学生!?」
 男はとても驚いていた。
 僕の見た目は若く見られがちだけど、そんなに驚かれるほどのものではない。
「ハタチ過ぎてもこんなにきれいな陶器のような肌を保っている少年は珍しいので驚いてしまいました」
とクラブの店長だという男は言い訳がましくそう言った。
「支度金としてバンス…前払い金を出せますが、どうしますか?」
と続けて訊ねられて、
「家族に残して行きたいので欲しいです」
と僕は答えた。
「一千万用意しましょう」
と言われ僕は息を飲んだ。
 まだ仕事もしていないのにそんな金額をポンと出すというのだ。
 僕は僕の常識が通用しない世界に足を踏み入れようとしているのかもしれない。
 その話の後、クラブの店長と別れて自分の部屋に帰った後もまだ僕はドキドキしていた。
 卒業式の後に待ち合わせ場所にクラブの店長は迎えに来ると言った。
 それまでに僕の気が変わればそこへ行かなければいいわけで……正直な話、当日まで迷い続けていた。
 行かなければ体を売らずに済む。
 切羽詰まってお金に困っているわけでもないのに、自ら男娼になるなんて馬鹿げたことは卒業式当日まではいつでもやめに出来るはずだった。
 なのに、僕は卒業式終了後は約束通り待ち合わせ場所へと向かい、迎えにやって来ていたクラブの店長の車に乗ってしまった。
 そして、部屋にちょっと立ち寄ってもらい、玲ちゃんに置き手紙と店長から渡されたバンスの1000万円の現金全額残して僕は出奔した。
 玲ちゃんは、細胞の研究をしたくて大学院に行きたがっている。
 でも、実家の会社が今大変な時で経済的に苦しく、玲ちゃんはあきらめようとしていた。
 このお金が玲ちゃんの学費の足しになれば…と僕は思った。
 置き手紙には、
『探さないで下さい。僕は女になります』
と書いてきた。
 あの内容ならおそらく実家から勘当されるだろう。
 もう、僕は跡取り息子という名の『籠の鳥』じゃなくなる。
 自ら身売りすることにしたというのに、なんだか僕は心がふっと軽くなったような気がしていた。(続く)


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Posted on 2008/07/24 Thu. 01:00 [edit]

『レンタルドールKEI』連載中  /  TB: --  /  CM: --

レンタルドールKEI 7 

 ドールになるために形成外科でヒアルロン酸注射を打つだけで出来る豊胸法で、Cカップのバストをつくられた。
 これは個人差はあるけれども数年で体内吸収されて自然となくなるものらしい。
 不思議な感じだった。
 上半身だけ見ていれば、喉仏の目立たない僕はまるで玲ちゃんになったみたい。
 柔らかみに欠ける僕の体に出来た柔らかな胸の膨らみがなんだかうれしかった。
 その後連れて行かれたクラブの寮内にあるエステルームで脱毛処理され、用意されていた下着と服に着替えた。
 パンティーもブラジャーもワンピースもピンク色で、僕はうれしくてうれしくて、心が浮き立つのを感じた。
 でも、そんな自分に、
「やっぱり、僕は変態なんだ」
と呪いの言葉を吐くもう一人の僕もいた。
 子供の頃に描いたピンクのドレスを着たお姫様にでもなれたかのようなうきうきした気分が途端に萎えていく。
 僕の女装姿を見た店長は、
「クールビューティなイメージでコーディネートした方が、もっと良くなりますね?」
と寮内のエステ専属エステティシャンの橘さんに同意を求めた。
「ええ、そうですね。素材がいい分シンプルなものの方が引き立つかもしれません」
と答えた橘さんの口調はどことなく歯切れが悪かった。
 寮の個室に戻ってから、鏡で自分の姿を見た僕は打ちのめされた。
 橘さんの歯切れの悪さの意味に気がついて……
 明らかに似合っていなかったのだ。
 大好きなピンクは、僕には似合ってなかった。
 そんなことに今頃気がついたのは、いつからかは僕は気がつかなかったけど、同じ顔した双子の姉の玲ちゃんがピンクの服を着なくなっていたからだった。
 冷たい印象を持たれがちな僕の顔立ちには似合わないそのかわいらしいピンクのふりふりのワンピースを脱ぎ捨てた僕は、更に醜悪なものを目にして泣きたくなった。
「これはなんなの?男でも女でもないこの体はなに?」
 鏡に映った女物の下着を身につけた僕の体は醜かった。
 僕は、股間にあるモノを邪魔なモノと認識し憎悪した。
 違和感というか邪魔なものという感覚は以前からあったものの、今まではここまであからさまに憎悪はしなかったのに、幼かった僕が封印したはずの想いは急速に膨らんでいった。
 女装した自分の姿と対面することによって封印が解けてしまったのだ。
 昨日までなかったおっぱいよりも、生まれた時からついている股間のモノの方を僕は拒絶した。
「お姫様にはこんなものついてないもん!」
 僕はパンティーの前のふくらみを見ながらそう言ってその場で泣き崩れてしまった。(続く)


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Posted on 2008/07/24 Thu. 18:15 [edit]

『レンタルドールKEI』連載中  /  TB: --  /  CM: --

レンタルドールKEI 8 

『僕は女になります』
 あの書き置きを書いた時は、親に見放してもらうための単なる口実でしかなかった。
 でも、鏡はあまりにも残酷だった。
 僕がなりたかったのは、子供の頃に描いたピンクのドレスのお姫様でも、玲ちゃんでもなかった。
 僕は本当は女の子になりたかったんだとはっきりと自覚した。
 ピンクのパンティーの前の膨らみを醜い余計なモノと認識した瞬間に……。
 実家の会社を継ぐ前にコネ作りのために官僚になるはずだった。
 親の望む道を大学卒業後も、今まで通り、がんばって我慢して走って行くはずだった。
 でも、僕はもう表社会で平穏に暮らしてはいけないことに気づいてしまった。
 あの写真をネタにいつ脅されるかわからない。
 警察に行く勇気のなかった僕は、やつらにとって利用価値のある地位につけば必ず強請たかり、恐喝されることになる。
 それに、金を要求されるよりも、脅されてまたやつらに犯されることの方が怖かった。
 それなら、官僚になんかならなければいい。
 ドールなんて奇妙なものになって身売りする方がまだましだ。
 おそらくこのクラブは、非合法のおもいっきりアンダーグラウンドなところに位置している。
 身を隠すにはちょうどいい。
 やつらに脅されて犯されるよりは、自ら金で体を売る方がましだ。
 僕はやつらが買えないような高級な商品になるつもりでいた。
 そんなことを考えていたのに、僕は自分で封印していた本当の気持ちに気づいてしまった。
 どうしよう?
 僕はちゃんと女の子になりたいのにこんな中途半端な醜い体でドールとして働かなければならない。
 契約期間一年が途方もなく長く感じられた。
 でも、もう、引き返せない。
 バンスの1000万は玲ちゃんのところに置いてきたし、中途退店は高額な違約金を請求される。
 気がついたら、僕にはドールとして一年働くという選択肢しか残っていなかった。(続く)

 
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Posted on 2008/07/24 Thu. 22:18 [edit]

『レンタルドールKEI』連載中  /  TB: --  /  CM: --

レンタルドールKEI 9 

 クラブの寮に連れて来られて二日目、僕はエステの施術中に眠ってしまった。
 昨夜はあれこれ考え込んで眠れなかったから。
 今まで漠然と今の僕は本当の僕ではないような違和感は感じ続けていた。
 それは、僕がお母さんやお父さんに褒めて欲しくていい子の振りをしているからだと思っていた。
 お母さんに笑いかけて欲しくて、本当のことを言うことをあきらめてしまったあの日から、僕は変わった。
 今まで仲良くしていた女の子たちと遊ばなくなった。
 男の子は乱暴で汚くて嫌いだったから、自然と僕は孤立した。
 代わりに本が友達になった。
 興味の無い委員に推薦される前に図書委員に立候補して、読みたい本を購入リクエストしたりした。
 見たくないものからは目をそむけ僕は本の世界に逃げこんだ。
 玲ちゃんと僕の体が小さな子供の頃と次第に変わっていくのを胸が締め付けられるような思いをして見ていた。
 同じ顔した性別だけ違う存在に惑わされ、お母さんに褒めてもらえる玲ちゃんがうらやましくて僕は玲ちゃんになりたいんだとずっと思っていた。
 でも、正解は「玲ちゃんと同じ性別の女の子になりたい」だった。
 両親から「男らしくなること」を求められていた僕が、認めるわけにはいかなかった答え。
 自分の正体に気づいてしまった僕は動揺していた。
「起きて下さい。今度は仰向けになって下さい」
というエステティシャンの橘さんの声で目を覚まして体の向きを変えた。
 バスタオルも剥ぎ取られて恥ずかしくてたまらなかった。
 今日の施術は恥ずかしい内容だったし……。
 おっぱいや股間にジェルを塗り込まれた。
「継続的に塗り続ければ乳首も乳輪も股間もピンク色に色素定着しますから、毎日お手入れして下さい」
と渡されたジェル。
 そのジェルを塗られたところは、恥ずかしくなるくらい不自然な淡いピンク色に変化していた。(続く)


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Posted on 2008/07/24 Thu. 23:01 [edit]

『レンタルドールKEI』連載中  /  TB: --  /  CM: --

レンタルドールKEI 10 

 エステの施術後、服を着て個室から出ようとした時、エステティシャンの橘さんと店長の会話を偶然聞いてしまった。
 細く開けたドアの隙間から、
「昨日も今日も反応無しでした」
と聞こえてきた橘さんの口調には焦りのようなものが感じられて、僕はすぐに個室から出ていくのをためらい、その場で立ち尽くしてしまった。
「それは単に女性はダメなだけなのか?機能的にまるで使い物にならないのかを確認する必要があるかもしれませんね?出来る仕事が限られてしまいますから」
「いえ…先に薫先生にお願いしてみては?」
「薫先生に?」
「私の勘が当たっていたとしたら、これは薫先生にお任せするのが適当かと……デリケートな問題ですから」
「体の問題に非ずということですか?」
「はい、たぶん……ドールとして生かすためには、今必要なのは屈辱的な検査ではないと思うんです」
 橘さんの台詞の後、しばらく沈黙が続いた。
「わかりました。まずは、薫先生にお任せすることにしましょう。あなたの勘を信じて」
「お願いします」
「変わったことがあれば、いつものように逐一報告を。水揚げ前のドールを生かすことに関しては、私よりも橘さんの方がご存知なのでしょうが…それでは、私はクラブの方へ戻りますよ」
「はい」
 僕にはその会話の意味がイマイチわかっていなかった。
 なんとかく自分に関する事柄だとは思ったけど、問題とされていることが何なのかはわからなかった。
 得体の知れない不安感が残った。
 店長がエステルームを出て行った後、僕が個室を出て行ったら、
「今日のワンピースは、よくお似合いですよ。あなたの知的で気高いイメージにピッタリです!」
と橘さんが絶賛した紺色のワンピースは、余談ではあるが、後にこのクラブの寮の制服になった。
 誰が着ても無難な色とデザインだったからだ。
 初日の僕のように極端に似合わない女装にショックを受けるドールが出ないように……。(続く)


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Posted on 2008/07/24 Thu. 23:06 [edit]

『レンタルドールKEI』連載中  /  TB: --  /  CM: --

レンタルドールKEI 11 

 ドールとしての初仕事前に、僕は寮内で毎日エステの施術やレッスンや講義を受けた。
 どうやら、この寮の実質的な責任者は橘さんのようで、店長はたまにしかやって来ない。
「あなたには体操のレッスンは必要ないので、その分ダンスレッスンを受けて下さい」
という橘さんの指示に疑問を感じて、
「どうして体操はやらなくていいんですか?」
と僕が尋ねると、
「体操の先生から『必要ありません』と報告がありました。全体的に身体能力に優れていますし、柔軟性も申し分ない状態です。体操の時間を省いてお仕事に必要な他のレッスンを受けた方があなたのためになります」
と橘さんは答えた。
 ドールとして体を売る以外にも仕事があるとかで、僕の場合はダンスレッスン多めな時間割りを渡されていた。
 他のドールと出食わすことがないものだから、僕のレッスンスケジュールが何を意味しているのかなんてことはこの時の僕には知る由もなかったから、僕はただ橘さんの指示に従うだけだったのである。
 二回目のダンスレッスンの時、
「圭ちゃんは上達早いですね!すごい、すごい!今日からダンスレッスン始めましょうか?」
とダンスの先生に言われ、
「お願いします」
と僕は答えた。
 さっきまでハイヒールを履いて歩く練習をしたり、女らしい立ち居振る舞いの練習を繰り返していた。
 クラブが推奨することは身につけておいた方が仕事のためになるはずだと思い、黙って言われた通りにしていただけだったのに……ほめられたら、ちょっとうれしくなった。
 ところが、ダンスレッスンのために180センチ超えた長身の先生にホールドされた僕は、なぜか体の震えが止まらなくなり、恐怖感から逃げ出したくなった。
 今にも叫び出したい気分でどうしたらいいかわからない。
 息ができない。
 すっと先生の体が僕の体から離れていった。
「離れたから深呼吸しなさい」
という先生の声が静かに響いて僕は何度も深呼吸をした。
「圭ちゃん、男怖い?」
という問いに反射的にうなずいてしまった。
「そう…それは困ったね。ドールのお相手は、ほとんど男性のお客様なのに」
 どうしよう?やつらに犯された時の恐怖感が男の先生に抱きしめられただけで……。
「でもね、僕は男じゃないんですよ」
「え!?」
 驚いた僕に、
「僕が本当は男じゃない証拠を見せてあげましょう」
と先生は言ってベストを脱ぎ、シャツのボタンを外し始めた。(続く)


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Posted on 2008/07/25 Fri. 00:00 [edit]

『レンタルドールKEI』連載中  /  TB: --  /  CM: --

レンタルドールKEI 12 

「!」
 シャツを脱いで上半身裸になったダンスの先生の胸を見て僕は驚いた。
 驚きすぎて言葉にもならない。
 先生の平らな胸には手術痕が残っていた。
 縫った痕がはっきりと残っていて痛々しい。
 何か病気で手術をしたのだろうか?
 それに意外な程に線の細い体つきをしている。
「驚いた?こんなにたくさん縫い痕残ってる体、いきなり見せられたらびっくりするよね?でもね、これは僕に乳房があった名残なんですよ」
「え?」
「僕の戸籍上の性別は女です。女と言い難い体になっても男じゃない。ここは男なんですけどね」
と胸を指さして言った先生の台詞の内容は僕には理解出来ないことだらけで益々混乱してきた。
「圭ちゃんは、性同一性障害、あるいは、GIDという言葉は聞いたことあるかな?ひと昔前は、一律おかまとおなべ扱いされてた。『おとこおんな』呼ばわりされたり……」
 僕は軽くうなずいたものの、本当はよくわからなかった。
 この時、まだインターネットは一般的に普及していなかった。
 だから、そういったことはたまにテレビで見るニューハーフやおなべの話で、女になりたがる男と男になりたがる女がいるんだくらいの認識しかなかった。
 そんなわけで、僕は自分が本当は女の子になりたかったんだと気がついてからパニックに陥ってしまっていた。
 昼間はレッスンに集中することで余計なことを考えないようにしていたけど……。
「僕は、性同一性障害です。GID-FtMという言葉よりも『おなべ』と言った方がわかりやすいかな?僕はこのスラングは嫌いなんだけどね」
と皮肉な笑みを浮かべて言った先生に僕は何も言えなかった。
 ただ、先生が普通の男ではないということだけはようやく理解した。
「小さければこんな手術痕が残らない縮胸法があったのですが、皮肉なことに乳房のいらない僕には巨乳と呼ばれるようなでかいおっぱいが手術前はついていたんです。乳房の下側から大きくメスを入れて中身を取り出し余った皮膚をたるまないように切り取り縫い合わせる方法で手術したのでこんな不自然な手術痕が残りました。それでも、後悔していません。おっぱいなんて男の僕の体にあってはならないものがなくなったことで、精神的に安定しましたからね」
 あってはならないものがなくなったら?
 先生の言葉に触発されてスカートの下のパンティーの中のいらないもののことを僕は意識した。
「圭ちゃん…君にはわかるよね?だって、女の子の君にはおちんちんはいらないものだものね?」
 僕が考えていたことを見透かしたかのように、なぜか先生はそう問い掛けてきてドキリとした。
「…はい、いりません」
 先生の真っ黒な瞳に真っ正面からみつめられて、僕はおもわず正直にそう答えてしまった。(続く)


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Posted on 2008/07/25 Fri. 16:25 [edit]

『レンタルドールKEI』連載中  /  TB: --  /  CM: --

レンタルドールKEI 13 

「やっぱりね」
という先生の言葉にうっかり「誰にも言えない!」と思っていたことを言ってしまった僕は狼狽した。
 シャツを着ながら先生は、
「今日のレッスン無し!その代り、圭ちゃんが今後どうしたらいいのかという話をしましょう」
と言った。
「座って」
と促されて先生と対面する形で教室にあったパイプ椅子に座ったけど、僕はひどく落ち着かなかった。
「一年契約でバンス受け取りしてこのクラブの寮に入ったからには、契約終了するまでここから出て行くことは許されません。それは圭ちゃんもわかっているよね?」
「はい」
「じゃあ、がんばって稼いで、体を女の子に変えるための費用を稼ぎなさい」
「費用?」
「僕は、女の体から今の体に変えるまでかなりお金をかけました。逆もかなりお金がかかります。だから、圭ちゃんはここのクラブでがんばって稼いで性転換手術の費用を貯めなさい。目標があった方ががんばれるでしょう?」
「……」
 なにも言えずにいる僕の目をのぞきこんできた先生と無言で視線を合わせた。
 たぶん、先生の顔付きからいって僕の言いたいことは読み取ってくれたと思う。
「ただし、今のままでは君は仕事にならないだろうから、特別レッスンをしましょう」
「特別レッスン?」
「ダンスレッスンの時間の一部を使って、ドールとして支障なく働ける状態にしてあげます。ドールが男怖がってたら仕事になりませんからね」
「でも、先生は……」
と僕が言いかけた時には、先生はさっと立ち上がって僕を背後から抱きしめてきた。
 さっき、先生は元は女性の体だった人なんだとわかったはずなのに、僕の体はなぜか震えていた。
「圭ちゃん、かなり鼻がいいようだね?」
 僕の反応を確認したらすぐに離れて、先生はまた正面の椅子に座った。
「見かけだけでも男に見えるように、僕はいろいろやったわけなんだけど、今も定期的にこの体を維持するためにやっていることがあります」
と言った先生は、細身ではあるけど身長180センチ以上あるし、顔立ちも僕より男っぽい。
 髪はオールバックに後に撫でつけているから広い額はまる見えだ。
 たぶん整えていなくてもそのままで形のいい眉。立派な鼻、薄い唇。
 きちんと剃ってあるけど、ヒゲの剃り跡や毛穴の感じから顔だけ見れば男であることになんら疑問を抱かせる余地はない。
 喉仏の目立たない男なんてそう珍しくもないから、喉仏がなくたって全然気にならない。
 事実、さっきの話を聞くまでは僕は先生のことを普通の男の人だと思っていた。
「男性ホルモンの注射を定期的に打っているとヒゲが生えてくるし体毛も濃くなります。声も低くなり以前とは違う声になります。首まわりが太くなり顎のラインも変化したり、筋肉の付き方などが男性的に変化していくだけではなく、体質も変わるようで体臭も変わります。元が女の体であっても男性ホルモンが増えたら男臭くなるんですよ。だけど、さっきの説明で僕が「生まれつき男の体」を持った男じゃないということは圭ちゃんは認識したよね?」
「はい」
「ところが、接近して触れると反応する。おそらく…圭ちゃんは、僕の体臭に反応している。ドーピングでまがいものの男の見かけを保ってる僕の体で一番男らしいのは、たぶん男臭い体臭だと思うし、理屈なしで人間が反射的に反応するのは五感に関することだから」
という先生の推測をぼんやりと僕は聞いていた。
 もし先生の言う通りなら僕はどうすればいいんだろう?
「圭ちゃんみたいな子のことは、僕は知っているけど、もう悪化するのも覚悟の上で『習うより慣れろ!』をやるしかないですね。なにしろ時間がない。荒療治でもやらなきゃ間に合わない。どうしてそうなったのかは僕は聞きません。ただ、慣らしてあげましょう。水揚げまでそう日がないだろうから」
と先生はきっぱりと言い切った。(続く)


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Posted on 2008/07/25 Fri. 16:50 [edit]

『レンタルドールKEI』連載中  /  TB: --  /  CM: --

レンタルドールKEI 14 

 レッスンが終わったら自分の個室に戻った。
 シャワーを浴びてから、個室内にある配膳口から食事を取り出して一人で食べていてふと思った。
「この寮はなんだか変だ」
とひとりごともつぶやいてしまった。
 僕の食べる食事を作っている人、寮内の掃除をする人などがいるはずなのに、僕は一度もそういったスタッフには会ったことがない。
 ここではこの数日、エステティシャンの橘さんとダンスの先生としか顔を合わしていない。
 エステルームの他に、用途別に数種類の教室が用意されているし、他のドールたちの部屋もある。
 小規模とは言い難い立派な設備が整っている。
 印象としては寮というよりは病院に似た造りで、どこもかしこもリノリウムの床というのが気になるけど……。
 確かに他に人のいる気配はある。
 でも、出くわすことはない。
「…奇妙だ」
 食べ終わったら、僕は食器の乗ったトレーを配膳口に戻した。
 部屋の壁にある配膳口は、小さなエレベーターのような構造になっていて、上の階から食事は下がってくる。
 食事が終わったら小さなエレベーター内にトレーを戻してボタンを押すとそれは上がっていく。
 出入り口のドアは手動になっているから自分で開け閉めする。
 これがここの寮の全個室にあるのだとしたらとんでもない無駄だ。エレベーター一基でかなりの金額するらしいのに……。
 トルルットルルットルルッ……
 突然、寮内専用の内線電話が鳴りだしあわてて取りに行った。
 橘さんから、スケジュール変更などで電話連絡することがあると言われていたから。
「もしもし?」
 橘さんからだと思って出た僕は、
『もしもし…圭ちゃん?』
と言うハスキーボイスに驚いた。
「先生?」
『うん、僕』
「どうしたんですか?」
『明日の着替え持って、室内エレベーターで三階まで上がっておいで』
「え!?」
 あれに入れと言う?
 男にしては小柄だけど身長167センチの僕に、あの狭い食事が運ばれて来る配膳用のエレベーターに乗れと言う?
『圭ちゃん、体重50キロあるかないかくらいでしょ?』
「はい」
『そこのエレベーター60キロまでなら大丈夫だから、早く乗っておいで。三階のエレベーター前で待ってるから』
 ガチャンって……言うだけ言って先生は電話を切ってしまった。
 僕は困りながらも明日の着替えを持って、シャワーの後に着替えた白い木綿のネグリジェ姿のまま、狭いエレベーターにお尻からバックして行って無理矢理乗り込むと腕を伸ばして外部にある3Fのボタンを押した。
 その手を引っ込めたらエレベーターは浮上していった。
 止まったところのドアは開いていた。
「今夜の僕の夜食到着~♪」
と能天気に先生が言った台詞に背筋がぞっとした。
「すみません、このまま帰っていいですか?」
と僕が言ったら、
「今のは冗談だから、早く出といで。僕はゲイだから女の子は襲わないから」
と先生は答えた。
「は?」
 またわからなくなってきた。
 先生は女?男?本当はどっちなの?
「わかるように説明してあげるから、とにかくそこから出てきなさい」
と言われて本来食事を運ぶ狭いエレベーター内から僕は渋々這い出した。(続く)


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Posted on 2008/07/25 Fri. 20:57 [edit]

『レンタルドールKEI』連載中  /  TB: --  /  CM: --

レンタルドールKEI 15 

 配膳用エレベーターから抜け出て、先生の後をついて少し廊下を歩いて行って招き入れられた部屋は、僕の部屋の二倍くらいの広さがあった。
「ここは僕の部屋だから。とりあえず、そこのソファーにでも座って」
と先生に言われて明日の着替えを抱えたまま、僕は黒革のソファーに腰掛けた。
 しばらくして、
「どうぞ」
とテーブルの上に柿右衛門のカップ&ソーサー置かれてびびった。
 こんな何十万もする物を普段使いしてるわけ?
 持っていても普段は食器棚の中に飾って置かれる物だと思っていたから、手に取るのはためらわれた。
「うっかり落として割ったりしても怒らないから、どうぞ」
とソファーの右隣の椅子に座った先生は、僕の様子をながめてクスクス笑いながら再度勧めてきた。
 恐る恐る手に取ってティーカップに口をつけたら紅茶じゃなかった。
 香りからして違うのはわかっていたけど、これは何?
「カモミールティー。ハーブティーは、圭ちゃん、初めて?」
「はい」
「これは気持ちを穏やかにして眠りやすくしてくれるから、寝る前はコーヒーや紅茶よりいいんですよ」
と言われて初めて飲むカモミールティーとかいうものを飲んだ。
 苦味はなくまろやかだけど独特の風味は優しい印象。
 一瞬浮かぶりんごのイメージ。
 嫌いではない。
 一度カップを置いたら、
「圭ちゃん、わりといいとこのお家の子でしょう?」
と先生に問いかけられて、
「そんなことないです」
と僕は否定した。
「それの価値を知らない人は平気で口をつけるのに、圭ちゃんはカップの絵柄を見て手に取るのもためらった。圭ちゃんみたいな若い子は自分でブランドの一つとして日本陶芸に手は出さないから、こういう物を所持しているようなお家の子なんでしょう?」
「……」
 先生にそう訊ねられて僕は黙り込んだまま唇噛みしめてうつむいてしまった。
 先生の言う通り、実家にはこういった高価な陶芸品の類はあった。
 でも、それはショーケースのようにお客様に見せびらかすための食器棚の中の飾り物でしかなくて、子供は触れることを許されなかった物。
「まあ、そんなことはどうでもいいことだから、答えたくなければ答えなくていいよ」
と言う先生の台詞に「それなら聞かないで下さい」と僕は心の中で抗議した。
 臆病者の僕には声に出して言えないけど……。
「なんで圭ちゃんをここに呼んだかというとね、昼間のレッスンだけじゃ間に合わなさそうだからなんだ。で、今夜から僕と一緒に寝てもらうことにしたから」
「え?」
「水揚げ前にまともに社交ダンス踊れるくらい僕とくっついても平気になってもらわないと……レイプみたいな無理矢理な水揚げされたらキツイと思うし……」
という先生の台詞にビクリと反応してしまった。
「先生、実は……」
 僕は初めてじゃないことを正直に言うつもりだった。
 でも、
「言う必要ありませんから。本当に初めてかどうかなんて…ドールとして初めてお客を取ることを形式上『水揚げ』と呼んでいるだけですから」
 そう言いながら僕の目をじっと見つめてきた先生の目は、言葉以上のことを伝えてきた。
 確かに先生の目は「わかっているから言うな」と言っていた。
 たぶん、先生は僕がどんな目にあったのかを察している。
 下唇をギュッと噛み締めて我慢していたのに、こらえきれずに僕の目からは涙がこぼれ落ちてしまった。
「飲みなさい」
と下げられたカップの代わりに置かれたグラスの中身を確認することなく一気に飲んだ。
 オレンジジュース?
 次々出されたそれを僕は泣きながら飲み干した。
 そのうち先生のブルーのパジャマの袖がうねりだし、僕の意識は途切れた。(続く)



【参考までに】
薫先生が圭ちゃんに紅茶入れてくれたカップ
薫先生はこういうカップ&ソーサーで圭ちゃんにカモミールティーを飲ませました(笑)


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Posted on 2008/07/26 Sat. 17:35 [edit]

『レンタルドールKEI』連載中  /  TB: --  /  CM: --

レンタルドールKEI 16 

 目が覚めた時、自分がどこにいるのかわからなかった。
 布団の中だけど、昨日まで寝ていた個室のベッドじゃない。
 薄暗がりの中、目を細めて見た部屋はあきらかに僕の個室じゃなかった。
 寝返りうって背を向けていた方を向いたらぎょっとした。
「うわっ!」
 隣に誰か寝てる!あやうくぶつかるところだった。
 体は無意識のうちに後へずり下がっていき、ベッドから落ちるギリギリのところまで後退していった。
「起きるには、まだ早いよ」
というかすれた声を聞いて隣に寝ていたのが誰なのかを知った僕は、
「いやーーーっ!」
とおもわず叫んでしまった。
「犯ってもいないのに、その反応は傷つくな~」
と先生に言われて、
「ごめんなさい!」
と僕は即座に謝った。
 でも、なんで僕はここで先生と一緒に寝てたの?
「スクリュードライバーがぶ飲みして、酔い潰れた子羊ちゃんをベッドまで運んで添い寝してただけなのに…圭ちゃんひどいな~」
という先生の苦情混じりの説明に首を傾げながら、
「スクリュードライバー?」
と僕が言ったら、
「昨夜、圭ちゃんが飲んだカクテルの名前。オレンジジュースで割るから口当たりはいいけど、ウォッカベースのアルコール度の高いカクテルだから、あんな飲み方したら潰れる…っていうか潰れたね」
と言って先生は笑った。
 カクテル?オレンジジュースだと思って僕が飲んでいたあれはお酒だったの?
 酔っ払ってるみたい……とは途中で思ったけど、お酒飲んでる自覚なかったし、あの時は嫌なことから逃げたかったから考えることは放棄してた。
「覚えてないようだから言っておくけど、ここは僕の部屋の僕のベッドだからね」
と言われて、昨夜の意識が途切れるまでの経緯をようやく僕は思い出した。
「気持ち悪くはない?頭は痛くない?」
と先生に訊ねられて、
「大丈夫です」
と答えた。
 でも、ひどく喉が渇いていることに気がついて、
「お水飲みたい…です」
と続けて言った。
「二日酔いにはなってないようですね」
 そう言いながら、手を伸ばして壁の電気のスイッチを押した先生は、ベッドから下りて冷蔵庫へと向かって歩いて行った。
 僕はまぶしくて何度か瞬きをしていた。
 大きなベッドの端っこにいた僕に、500mlのペットボトルを冷蔵庫から取り出した先生は放って寄越した。
「ほれっ」
って。
 ちょっと意外だった。先生は話し方も立ち居振る舞いも基本的に品の良い印象だったのだ。
 育ちの良さはちょっとした仕草にも出るもので、先生のなにげない動作にもそれは見受けられた。
 そういう先生は、こんな風に物を放って寄越したりしないような気がしていたからびっくりした。
 それでも、反射神経は平均よりは良い僕は、しっかりキャッチして、
「いただきます」
と蓋を空けて一気にミネラルウォーターを飲み干した。
 その間にさりげににじり寄って来ていた先生が抱きついてきそうな気配を察知して、反射的にばっとかわしたら、
「これだから、武道やってた子はめんどうなんだよな~」
と言って先生は乱れた髪をかきあげながら、眉間にしわを寄せた。
「襲わないから抱かせなさい」
と言ってきた先生に、
「先生、それおもいっきり矛盾してませんか?」
と僕が指摘したら、
「矛盾してませんよ。でも、圭ちゃんが安心出来るように大丈夫な理由を先に説明してあげましょう」
と答えて先生はふっと不敵な笑みを浮かべた。
「大丈夫な理由?」
「そう、大丈夫な理由」
 不思議に思って聞き返した僕に、先生は真面目な顔してはっきりとそう言った。
 オールバックにしてた前髪がおりてるせいか昼間の先生よりも若く見えた。
 僕よりちょっと上くらいかな?
 二十代半ばくらい?
 そんなことを考えていたら、
「僕はゲイだから女の子の圭ちゃんは恋愛対象外だし、性的欲求の対象にもなりません。僕は男が好きなんです。だから、大丈夫です」
という先生の爆弾発言直撃くらって、僕はまた混乱してしまった。
 元は女性で今の外見は男性の先生がゲイ?
 ノーマルなんだかアブノーマルなんだかわけわからない。
 元は女性なんだから男が好きでもおかしくはないような気もする。
 でも、先生は男になりたくて男になったわけで…今の先生の外見なら男同士に見えるから、男と付き合えばゲイカップルに見えるかもしれない。
 だけど、戸籍は女って言っていたから、男が好きなら男女として結婚することも可能。
 そこまで考えた時に、花嫁姿の先生想像してしまってめまいがした。
 あわてて頭の中で修正して、タキシード着た先生とウェディングドレス着た小柄な美少年のカップルを想像してみたら、まだそっちの方が自然に思えてしまった僕はおかしいのだろうか?
 男なのに女の子になりたいというか男であることに強烈な嫌悪感まで感じているあたりで、僕はもうすでにおかしいのだろうけど、先生はもっと複雑過ぎて僕にはよくわからない。
 トランスの世界の入口にたどり着いたばかりの僕は、トランスセクシャルの中でもややこしい人にいきなり出会ってしまって混乱してしまった。(続く)



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Posted on 2008/07/26 Sat. 17:48 [edit]

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レンタルドールKEI 17 

「先生は男になりたくてそうなったんですよね?」
「そうですよ」
「それならなんで女じゃなくて、男が好きなんですか?」
 僕は考えれば考えるほどに混乱して、どうにも納得いかなくて先生にそう質問してしまった。
 先生はそれを聞いてちょっとだけ悲しそうな顔をした。
「男は女を好きになるものとは限らない。女は男を好きになるものとは限らない。両方好きだっていう人もいます。恋愛感情と性的嗜好は見た目の性別と合致しない方向に向かうことがあるわけで、ゲイ、レズビアン、バイセクシャル、いろいろあるんです。僕の場合は、心は男なのに体は女で生まれてしまい、精神的苦痛が大きかったため、自分の本来そうあるべき性別に見えるように身体を変えました。でも、僕はゲイだから、元の体が女でも女としてではなく、男として男と愛し合いたいわけです。こうなってみても性的欲求は女にはない僕は、トランスセクシャルの中でも特殊で少数派です。他の女が好きなノーマルな性指向のFtMからも変態呼ばわりされてますよ。僕のことは変態と思っていただいて結構です。ただ、女の子の圭ちゃんには無害な人種だということだけは覚えておいて下さい。僕は心が男ではない人のことは男と認識しませんし性欲適用外ですから」
という先生の回答を聞いた僕は、どうやらとても失礼な質問をしてしまったようだと気がついてうろたえた。
 でも、トランスセクシャルの領域についてはまるで無知な僕は、
「ごめんなさい」
としか言えなかった。
 僕は、先生がはっきりとゲイだと言っているのに、元は女性という先入観から「男になりたい女は、普通の男が女を好きになるように女を好きになるんじゃないの?」という固定観念にとらわれて馬鹿な質問をしてしまった。
 申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになってしまって苦しい。
 僕はこういう時になんと言えばいいのかもわからない自分の愚かさに嫌気がさした。
 学校で習ったことなんかちっとも役に立たない。
 競争社会でついこの前までは勝ち組コースを走ってきたはずの僕は未熟だった。
 今まで学校の勉強と親に強制されて嫌々通った習い事しかしてこなかった。
 嫌なことから現実逃避するために好きな本しか読まなかった。
 まともな友達付き合いも出来ないような欠陥人間。
 いつの間にか、僕は下唇をギュッと噛み締めていた。
「圭ちゃんは、どっちが好きなの?」
 重苦しい沈黙を破ったのは先生からの質問だった。
「え?」
「男?女?それとも両方?」
「わかりません…あ、でも、女の子と一緒の方が緊張しないし、安心するかも?」
 僕は、男と女どっちが好き?なんてことは考えてみたことがなかったから、正直にそう答えた。
「男と一緒だと緊張する?」
「はい、緊張します。なんだか息苦しい感じがすることがあって、友達になりたくてもすごくドキドキしちゃって声もかけられなかったりして、見てるだけということも……」
と僕が話してる途中で先生は吹き出して、なぜかしばらく笑ってた。
「どうして笑ってるんですか?」
「シャイな圭ちゃんの淡い恋心があまりにもかわいらしいもんだから」
という先生の返答に僕は固まった。
 うそ……あれは友情じゃなくて、恋だった!?
 僕は、自分でも気づかないうちに男に淡い恋心を抱き片思いしていたことを先生の指摘でようやく気がついた。
 先生は、
「圭ちゃん、乙女だね~♪」
とまだ愉快そうに笑っていた。
 僕はなんだか恥ずかしかった。
 それと同時に「変態確定!」という言葉が頭の中で大きく響いた。
 男なのに女の子になりたいし、学生時代に恋したらしい相手は男だったし。
 本当は女の子になりたかったんだということに気づいたばかりの僕にはそれはかなりショッキングな内容だった。
 まだ、女の子になりたい自分を前向きに自己肯定出来ていなかったから……。
 しかも、今はドールなんて男でも女でもない者になっている。
『これは、自分を知ろうとしなかった僕への罰?』
 ぼんやりとそんなことを考えてしまった。(続く)



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【GID用語などの解説】
FtM:心は男性であるため女性から男性の外見(身体)への性別変更、あるいは戸籍の性別変更まで希望している性同一性障害(GID)の人のこと。男性から女性へはMtFという。いずれの場合も心と身体の性別が合致しない状態を、病院では性同一性障害の治療と称して、精神科でカウンセリング、各専門の科で性染色体検査(性染色体異常がないかを確認するために必要)や性器の検査などを行ってから、適切なホルモン治療で男性化や女性化を進めていく。SRSと呼ばれる性別適合手術の実施は、治療の最終段階で医師の診断と本人の希望で決める。
ただし、日本国内のガイドラインに沿った治療はせずにホルモン剤の摂取をしたり、海外での性転換ツアーに参加する人たちもいる。現在、某医大がSRSの休止をした影響により海外渡航組の増加傾向は推測されている。

《注意事項》
ネット上でホルモン剤の売買はおこなわれていますが、ホルモン剤の使用によって、うつ病になりやすくなる、頭痛、めまい、吐き気、いらだちといった副作用が起きることもあります。また、高脂血症や血栓症や肝機能障害など様々な身体の病気発病のリスクを高める可能性があるため、安易にネットで入手出来るホルモン剤に手を出すことはお勧め致しません。特定の既往症のある方は、副作用で死のリスクが高まるため、医師がホルモン剤のピル(経口避妊薬)を女性の病気治療に使用しないこともあるくらいホルモン剤の副作用は危険なのです。途中でホルモン剤の使用をやめても完全に元の身体に戻ることはありませんので興味本位で摂取するのは絶対にお止め下さい!特に男性は女性ホルモンを一定期間以上常用すると子供を作れない身体になりますのでご注意を!!

Posted on 2008/07/26 Sat. 18:20 [edit]

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レンタルドールKEI 18 

「大丈夫な理由は、納得出来ましたか?」
と先生に声をかけられ、一瞬びくっとした。
 それでも、
「はい」
となんとか僕は答えることが出来た。
 もしかしたら、うそをついて僕を騙すためにそんなことを言ったのかもしれない。
 でも、それなら自分をおとしめるようなことをあそこまで言う必要があるだろうか?
 演技であんな悲しそうな傷ついたような目まで表現出来るものだろうか?
 自分を高値で売るためにここまで来てしまった僕は、男を怖がっていたら、仕事にならないわけだし、それをなんとかする手助けを先生はしてくれようとしている。
 今の僕は先生を信じるしかない。
「抱かせなさいって言い方がまずかったかな?ただ抱きしめるだけだから、ちょっとだけ僕の腕の中でおとなしくしているだけでいい」
「抱きしめるだけ?」
 肩透かしくらったみたいだった。
 本当に抱かれてしまうのかも?と僕は怯えていたから……。
「とりあえず今日は抱きしめるだけ。その先は圭ちゃん次第だけどね」
という先生の台詞に身を固くしながらも、
「本当に抱きしめるだけなんですよね?」
と再度確認した。
「布団の中で向かい合って抱き合うだけ。圭ちゃん、おとなしくしてられそう?攻撃技かけられるのは勘弁って感じなんだけど」
と先生は苦笑した。
 普通の状態なら、僕は空手と合気道の有段者だから、相手に攻撃技仕掛けてでも嫌なら逃げ出せる。
 先生が約束違反してきた場合は、対処出来ないことはない。
「たぶん……」
 昼間のダンスレッスンのことを思い出すと不安だったけど、攻撃技仕掛けることなくおとなしくしていることは出来るはず。
「こっちへおいで」
と先生に言われて、恐る恐る先生が横たわっている場所まで布団の中に潜り込んでいった。
 むあっとむせ返るほどに男臭い布団。
 抱きしめられた瞬間、背筋がざわったとした。
 怖くて怖くて、
「キャーーーッ!」
と叫んでしまった。
 叫び声をなんとか止めた後も体のふるえは止められなかった。
 その間、
「僕は圭ちゃんの味方。ひどいことはしない。お客様もドールの圭ちゃんを愛してるくれる」
と先生は何度も繰り返し繰り返し、呪文のようにその言葉を僕の耳元で囁き続けていた。
 そして、その手は優しく僕の背中を撫でさすり続けていた。(続く)


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Posted on 2008/07/26 Sat. 19:47 [edit]

『レンタルドールKEI』連載中  /  TB: --  /  CM: --

レンタルドールKEI 19 

 ようやく解放されて布団の中から這い出したら、
「朝の起きぬけの布団の中が一番男臭いから、ちょっときつかったかな?僕の場合は既に加齢臭でおやじ臭くなってるんですけど……」
と先生は言った。
「おやじ臭いって?先生おいくつなんですか?」
「今年で35になります。三十路過ぎると体臭がおっさん臭くなるのを自分の体で知って、ちょっとショックでしたけど……」
「え!?」
 先生の答えに僕はびっくりし過ぎて二の句がつげなかった。
 どうみても三十過ぎには見えない。
「びっくりした?自分で言うのもあれなんですけど、僕はだいたい10才くらいは若く見られるんです。FtMは若く見られる傾向にあるようなんですが、小柄な人だと10代の少年と間違われることもあるらしくて……さすがに僕くらいでかいとそれはないんですけどね」
と先生は苦笑した。
 僕は驚きながらも聞き慣れない言葉を耳にして疑問に思い、
「FtMってなんですか?」
と質問した。
「Female to Maleの略で女から男の体に変化しようとしている性同一性障害と日本では呼ばれているGIDの人のことです。手術しても男性的外見と健康維持のために男性ホルモンの注射は欠かせないので、男性亜種のような者だと僕は思っています。ホル注無しでは維持出来ない体は、完全な男の体を求めるなら不完全な状態です。それでも、自分のそうありたい性別に出来る限り近い体であることを望むなら、それしか選択肢がないわけですから仕方がありませんが。逆も同じ…というかあっちの方がもっとハイリスクか……」
と答えの最後の方はひとりごとを言いかけた先生に、
「逆ってなんですか?」
と僕は質問してしまった。
「Male to Femaleの略で通称MtFです。さっきとは逆で男から女の体に変化したいGIDの人のことなんですが、MtFとFtMとでは、基本の体内構造に大きな違いがあります。ノンオペ…下半身の手術はしていなくてもMtFは女性ホルモンの注射がなければホルモン不足で心身の健康を保つことが出来なくなり、うつ病による自殺など死のリスクも高い。一方、ノンオペ状態のFtMは男性ホルモン摂取出来ない状況でも、心身不調は感じてもMtFほど大きなダメージは受けないはずなんです。男性ホルモンのアンドロゲンなどの投与で卵巣機能低下していても、ホルモンを製造してくれる内生殖器と副腎が機能していればXXの性染色体を持つ生物として生きていくために必要な女性ホルモンと男性ホルモンの分泌は可能なはずです。いきなり男性ホルモンの投与止めればホルモン不足には陥るでしょうが。FtMの場合、縮胸手術で乳腺摘出済みなら、体内の男性ホルモンが低下して女性ホルモンの分泌が増加してもまた胸が膨らむことはありません。……ただ、気分的な変化とか筋肉落ちて皮下脂肪がつきやすくなったり、また生理がきちゃう可能性はあるんで、それは面倒かな~?」
と言いながらポリポリと頭かいてる「先生に生理……ありえなさ過ぎる!」と僕は思った。
 僕より高身長で男らしく見えるこの先生が元女性っていうだけでもありえないのに、この姿で生理がまた来る可能性があるの!?
「まあ、僕の場合はゲイでも戸籍は女だから、彼氏と結婚することは出来るし、男性ホルモンの注射をしばらく中止して女性ホルモンのバランス整えるために女性ホルモン投与してやれば子供も産めないことはないんだけど、そんな気色悪いことしたくないから『子供が欲しけりゃ卵子やるから受精卵作って、おまえが産め!』とでも言ってやるけどね。腸の一部を子宮代わりにして受精卵を着床させれば今の医学では男も妊娠出産可能と実験データは出ているんだから、どうしても子供が欲しいのなら彼の方がそれをやればいい。圭ちゃん、僕に母性を求める方が間違ってると思わない?」
と同意を求められて、おもわず何度もうなずいちゃったけど、先生はマジで彼氏にお尻の穴から赤ちゃん産ませるつもりなの?
 死んじゃうって!絶対無理だよ~!!
「さすがに出産は帝王切開になるらしいけどね」
とニヤリと笑った先生は、僕が何を思ったのか気づいていたようだった。
 そして、先生のその台詞を聞いた僕は、男が帝王切開で出産するというのも微妙だけど、お尻の穴から産むよりはましかな~?なんて妙な納得の仕方をしてしまっていた。(続く)


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Posted on 2008/07/26 Sat. 20:21 [edit]

『レンタルドールKEI』連載中  /  TB: --  /  CM: --

レンタルドールKEI 20 

「先にシャワー浴びておいで。もうじき朝食の配膳が始まるから」
とバスタオルと昨夜僕が持ってきた着替えを手渡された僕は先生の部屋のバスルームに案内された。
「一緒に入る?」
と先生に言われておもいっきり首を横に振ったら、
「冗談だよ。そんなに赤くなられたら、圭ちゃんのストリップは見てみたいような気はするけどね」
と先生はクスクス笑って言った。
「あっち行って下さい!のぞいたりしないで下さいね!!」
と僕が言ったら、
「はいはい、でも、圭ちゃん耳まで真っ赤になっちゃってかわいいよ」
なんてことを言う先生は、絶対僕のことからかって楽しんでる。
 僕は子供の頃から男の子に体を見られるのが恥ずかしくて、いつも角の方でこそこそ着替えしていた。
 中学・高校時代の体育や親に習いに行かされていた道場での着替え中は、男子更衣室の男臭さにむせ返りそうになっていた。
 正直な話、あまりの男臭さに辟易としていた。
 僕が消臭スプレー常備して使ってるの見て真似するようになった子たちもいたけど、それでも間に合わないほどの雄臭さは狭い男子更衣室内に充満…というよりも染みついていた。
 そういえば、自分の体をなるべく見られないようにすることばかり考えていたから、周りの男子の体はあまり見ていなかったっけ。
 見るのも恥ずかしかったんだけど……
 プール授業は体調が悪いと言ってよくずる休みした。
 だって、海パンだけで人前になんか出られないもん。
 おっぱいないけど乳首見られちゃうのが嫌だった。
 玲ちゃんみたいな胸の隠れるスクール水着がよかったのに……。
 僕は、シャワーを浴びながらそんなことを思い出していた。
 男の体でしかなかったあの体を人に見られるのが恥ずかしかった僕は、やはりおかしかったのだろうか?
 豊胸おっぱいでも柔らかなふくらみがある今の胸の方がうれしいし、脱毛されてどこもかしこもお肌がツルツルすべすべしているのも心地いい。
 後はこれさえなかったらな……股間を見る度そういう想いが高まっていく。
「一年我慢出来るかなぁ?」
 女の子になりたいと気づいてしまった僕には、ドールとして今の状態のままで働くのは苦痛でしかない。
 仕事する前から憂鬱だった。
 シャワーから出たらバスタオルで拭いて、さっさと水色のレースとリボンのついたパンティーを履いて、紺色のロングのフレアースカートも履いてしまった。
 見たくないものを隠すため、僕の着替えの順番は変なんだ。
 後からブラジャーを身につけて白いブラウスを着た。
 首のところでブラウスのリボンを結び、紺色のブレザーを着たら今朝の支度は出来上がり。
「圭ちゃん、ごはんだよ~!」
と先生に呼ばれて、 
「はい、今行きます」
と僕は答えた。(続く)


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Posted on 2008/07/26 Sat. 20:47 [edit]

『レンタルドールKEI』連載中  /  TB: --  /  CM: --

(R18)レンタルドールKEI 21 

 あれから毎晩先生の部屋に泊まっている。
 朝食を一緒に食べた後、空の配膳用エレベーターに乗って、僕は自分の個室に戻りレッスンやエステの施術へ行く。
「秘密のレッスンだから、誰にも言っちゃいけないよ」
と先生は言っていた。
「圭ちゃんはクラブの大切な『ドール』という商品だから、スタッフが手をつけてはいけない。でも、それはビジネス上の正論でしかない。実際には、ドールは、傷ついたり、悲しくなったり、さびしくなったりもする心を持った人間だから、心のケアも必要なんです。僕は自分の欲求で弄ぶようなことはしないけど、仕事出来る精神状態じゃない子のメンテナンスやリハビリはします。必要なら体の触れ合いも……」
とも言った。
 僕は、要メンテナンス状態。
 男怖いなんて状態で男のお客に体売れるわけないのに、売らなくてはならないところまで来てしまった。
 あんなことがなければここに来ることはなかったかもしれないけど、皮肉なことに男に抱かれるのが怖くて過剰に恐怖反応してしまうため仕事にならない自分の情けない状態に落ち込んでいたりもする。
 先生は、
「大丈夫だから」
と言ってくれるけど水揚げはいつ決まるかわからないから恐怖の日々だった。
 でも、ちょっと慣れてきたのかな?
 悲鳴はあげなくなった。
 夜は寝る前にお酒飲むこと多いんだけど、今夜もワイン飲まされ酔ってきたな~と思ったら、いきなりお姫様抱っこでベッドに運ばれびっくりした。
 びっくりしすぎてとっさに声も出なかった。
 先生は、
「今夜はどうしても圭ちゃんにやってもらわないとならないことがあるんだけど、出来るかな?」
と聞いてきた。
「なんですか?」
「オナニーして見せて下さい」
「!」
「びっくりするよね?こんなこといきなり言われたら…水揚げ前にドールは勃起と射精が可能かどうかを確認しなければならないんだけど、圭ちゃんはここに来てからオナニー一度もしてないよね?」
と先生に言われて僕は無言でうなずいた。
 そういえば、やつらに犯されてから一度もオナニーしていない。
 体の機能的にたまってないはずないのに全然気にならなかった。
 でも、なんで先生にわかったんだろう?僕がここに来てから全然してないこと。
「自分でしてるところを僕に見せるか?僕が手で抜いてあげる間おとなしくしているか?どっちがいい?」
「いやです!」
 どっちもやだ!!
 恥ずかしくて死んじゃうよ~。
「いやで済まされないから、ごめんね」
と先生はベッドの上に座っている僕の後に座って後抱きにして、ネグリジェの中に手を入れてきた。
 そこを触れられた瞬間、ビクンと反応した。
「先生、やめて…イヤァ!」
 いやなのに力が入らない。
 本当はわかってる。
 体は感じてるの……でも、涙はこぼれ落ちていった。
 男として反応するそこが恨めしかった。
 細くて長いすらっとした先生のきれいな手指は右手で僕が感じるところを滑らかにたどりながらも、左手は僕の股間にあって欲しくないモノを握ってしごきたててあっと言う間にフィニッシュへと導いた。
「せ…んせ…やっ!出ちゃ…うっ」
と言いかけて先生の手の中に放ってしまった。
「ううっ…ひっくっ……ずずっ」
「ごめんね」
と言って先生はティッシュで拭いてあと始末してくれたけど僕は両手で顔を覆って泣いていた。
 恥ずかしくて…触られたのも見られたのもショックだったし、心の片隅ではもう射精なんかしたくないという想いがあったから出てしまったのがたまらなく嫌だった。
 犯されまわされた日、体中にまみれたあの臭いがつんと鼻をついた。
 女の子にはない男の身体の生理現象は僕を奈落へ突き落した。
 ドールになって豊胸でおっぱいが出来ても、毎日女物の衣類を身に付けるようになってみても、結局は……僕の身体は女の子じゃないんだ。
 あの漂白剤の臭いの白濁した液体の放出がその証。
 ひどくみじめな気分だった。
「圭ちゃん、お風呂入ろう」
と先生に言われても僕は無言で小さくうなずくことしか出来なかった。(続く)


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Posted on 2008/07/26 Sat. 21:14 [edit]

『レンタルドールKEI』連載中  /  TB: --  /  CM: --

レンタルドールKEI 22 

 先生がバスタブにお湯をためておいてくれたから、体を洗ってからお湯に浸かった。
 特にアソコは念入りに洗った。
 ティッシュが貼り付いちゃってたから……。
 なんで先生が、
「お風呂入ろう」
って言ったのかはそれ見て気づいた。
 欲求はなくてもたまるものはたまっていたから、僕の体から吐き出されたそれは粘着性が高くて、ティッシュで拭いてもペタリと貼り付いて取れなくなってしまったからだ。
 嫌悪感が増した。
 気づかなければこんなに苦しまずに済んだのに……。
 僕は、はっきりと自分の体の男の部分を拒絶し嫌悪するようになっていた。
 犯され穢された体を高値で売って売りまくって堕ちるとこまで堕ちるか、何も感じなくなるか……行き着く先はそんなところかと思っていたのが、ひょうたんからこまが出た。
 玲ちゃんにお金と一緒に残して来た、
『探さないで下さい。僕は女になります』
が本当になりそうなんだからしゃれにならない。
 あの時は、実家から見放されるようなことを書こうと思ったら、あの文章が思い浮かんだだけで、本気で女の子になることは考えてなかった。
 犯されたのは男の僕だったはずなのに、今の僕はまるでレイプされた女の子みたいに男を怖がっている。
 女の子になりたかったんだっていう自分の本当の気持ちにここに来て気づくなんて計算外だった。
 自分の体から放った精液にも嫌悪感を感じた。
 あの臭いは嫌なことを思い出させるから。
 こんなんでドールの仕事に耐えられるんだろうか?
 僕は、クラブのドールとして男に抱かれなくてはならないのに……。(続く)


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Posted on 2008/07/26 Sat. 21:14 [edit]

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レンタルドールKEI 23 

 お風呂から出たら、なんだかいい匂いが漂っていた。
 花の香り?
 ベッドの端に腰を下ろしたら、
「飲みなさい。特製ハーブカクテルだから」
と大きめのマグカップを先生は差し出した。
「これには何が入ってるんですか?」
 僕は、オレンジジュースだと思っていたスクリュードライバーで失敗していたため用心して訊いてみた。
「カモミールティーと白ワインとはちみつとラム酒少々。寝酒に一杯くらいならどうということはありませんよ」
と先生は答えた。
「おめでとう。圭ちゃんは肉体的には問題なくドールのお仕事を出来る状態です。精神的な問題解決をする必要性はありますけどね」
と先生に言われこの先どうなるのだろうと思ったら更に気が重くなった。
 温かかくて甘いカクテルを飲み干したら、
「このアルバムを見て」
と渡されたアルバムには女の子の写真が貼られていた。
 やんちゃで元気そうな女の子は、どの写真でも笑っていた。笑顔で破顔しているからよくわからないけれども、顔のパーツ的に元々の顔立ちは整っていそうだ。
 成長過程がわかるそのアルバムの写真の最後は、ボンデージを着て鞭を手にした女王様だった。
 背が高そうで手足の長いその女の人は、おっぱいが大きくて、ボンキュッボンのダイナマイトバディーだった。
 キツイメークで怖そうな顔しているし、カメラを睨みつけてたんだろうな?
 目線が鋭い。
 それにしてもなんでこんなアルバムを見せられたのだろう?
「それね、まだ女だった頃の僕」
「え!?」
 先生の発言に驚いた僕は、写真と先生を見比べてしまった。
「同一人物には見えないでしょう?」
と言われ僕は無言でうなずいた。
「これがおっばい取る前の僕。男性ホルモンの注射もまだだった頃」
と女王様姿の写真を指さした。
「大学生の時、SMクラブの女王様のバイトやって手術費用貯めたんだ。おなべホストやるよりそっちの方が稼げたし、僕は昔から男が好きだったから」
と先生は言ったけどこんなに変わるものなの?
「僕は縮胸手術の他に整形もしてるんですよ。鼻だけですが、顔の第一印象では顔の真ん中にある鼻が気になるもので、ぱっと見は鼻の大きさや形で男か女か判断しがちなんです。それで、男らしい鼻に整形してもらいました。おかげでパス度アップしました」 
とニコッと先生は笑った。
「パス度ってなんですか?」
「自分の見られたい性別に他人に見られることです」
「先生はパス度高そう」
と僕が言ったら先生はうれしそうな顔をした。
「胸と鼻は日本で手術を受けましたが、下はタイに飛んで手術しました。あっちの方が安く簡単に出来るけど、タイ語覚えてこちらの要望を伝えられるようになってから飛んだから、ちょっと大変でしたが…」
という先生の台詞にはびっくりした。
「下って……」
「見る?」
と言った先生は僕の返事を待たずにパジャマのズボンとパンツをさっさと下ろしてしまった。
 僕はびっくりしすぎてそれを凝視してしまった。(続く)


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Posted on 2008/07/27 Sun. 00:00 [edit]

『レンタルドールKEI』連載中  /  TB: --  /  CM: --

レンタルドールKEI 24 

 ついてる……。
 手術したと聞いてても、実際に見せられたらその衝撃は強烈だった。
「これは立ちション用ホース。残念ながら勃起はしませんから、セックスには使えません。こっちの玉は中身はシリコンボール」
とつまんで説明されてもコメントのしようがない。
 くるりとこちらにお尻を向けた先生が、
「男風呂やサウナでこういう体勢なって後から見えちゃってもわれめ無し!」
と言ったところまでは、見てるのがちょっと恥ずかしいような気がしていたのだけれども、それでもなんとか黙って見ていられた。
「でもね、密かにここに穴はあるんですよ」
と前屈みの体勢で、男の体には穴は無いところに人差し指を突っ込みながらそう先生が言ったものだから、僕はびっくり仰天してしまった。
「な、なんでそんなところに穴があるんですか!?」
「今はこういう姿でも元は女の体なもんで、全部ふさがなければ使えるから……リクエスト通りに手術してもらうために、わざわざタイ語習ったんですよ。現地行って医者とタイ語で話すか筆談するかしないと希望通りになりませんから。最近は性転換ツアーのコーディネーター兼通訳とかがいるらしいんですけど、特殊なオーダーがあるなら直談判しないとダメですし、僕が飛んだ時にはそんなツアーなかったから」
「特殊なオーダーって…どうして完全に男の形にしなかったんですか?」
「滅多にここは使わないんだけど、塞ぐとまずい事情が有るからなんだ。セックスの方は僕はタチだから、基本的に相手に大人のおもちゃや手指や腕を使うんだけど…ただ、男性ホルモン摂取出来ない事態に陥った場合に、生理がきちゃっても経血の排泄を出来るようにしておくためには穴は必要なんだ。僕は尿道経路の変更と外性器の形成しかしてないから、子宮も卵巣も卵管も全部そのまま残ってるもんでね」
とあっけらかんと言う先生に僕は唖然としてしまった。
 男性ホルモン摂取出来ないと、男にしか見えない先生に生理がくるという話にも驚いていた。
「玉で普段はこの穴は隠れるけど、まあ、なんとか使用可能ではある。きついんだけどね」
とそう先生は続けて言ったけれども、僕はありえなさ過ぎると思った。
 先生が挿れられてるところはちょっと想像したくなかった。
「先生は、その…挿れられるのはいやじゃないんですか?」
 僕はおもわず訊いてしまった。
 すると、
「嫌だったよ、こういう体だった頃は」
と開いたままのアルバムの写真を先生は指さした。
 今の先生とは全然違う女らしいラインを描いた体を。
「男性ホルモンの注射始めて男性化が進んできて、生理が止まって、すね毛が濃くなったり、ひげが生えてきたり、声が低くなったりして……手術でおっぱい取ってから、やっと割り切れるようになってきたかな?トランスセクシャルの中でも異端な僕は不利だから。タチでもセックスで使用可能な本物の男のモノは持っていないし、相手がバイだと女に持ってかれることもある。ずるいかもしれないけど、万年ED状態のゲイでドSの僕は女の部分を武器にするしかない。でも、ここを使って攻めることも出来るから、受け身のセックスなんてしないよ」
と言って先生はニヤリと笑った。
 そして、
「ハンデがある分したたかにならないとね」
と僕の目をのぞきこんで言った先生の目は猫科の動物のような目をしていた。
 猫じゃないけど…肉食獣の豹とかチータ系?
 みつめられたら背筋がざわっとした。
 パンツとパジャマのズボンを一気に上げた先生は、
「だけど、穴を使い過ぎるとだるくなるからあんまりしないんだ。気のせいかお肌の調子はよくなるような気はするんだけどね~」
とちょっとぼやき気味にそう言った。
「なんでですか?」
「う~ん、たぶん女の部分でセックスすると女性ホルモンの分泌活性化しちゃうせいじゃないかな?女性ホルモンのエストロゲンはお肌の調子を整えてくれるらしいから。受精しやすいように、セックスの後は動きたくなくなるように脳が指令出して、だるくなるようにしているとかいう話も聞いたことあるけど、僕の場合はムダ打ちだから意味ないんだけどね」
「どうしてムダ打ちなんですか?」
「男性ホルモンの注射打ってると生理は止まる。排卵してないから、避妊無しでいくらやっても妊娠しない。相手ムダ打ちでしょう?やった後にだるくてなっておとなしく休んでいても排卵してない僕が受精するわけないから脳からの指令もムダだし」
と先生はニヤッと笑った。
 でも、すぐに真顔になって先生は遠くを見るような眼差しでつぶやいた。
「僕は絶対に妊娠する心配が無くなったから、割り切れるようになったのかもしれないけど…」
 先生のその言葉を聞いてふと思った。
 あたりまえのことなんだけど、女の人は妊娠するんだっけ……。
 昔の写真見せられても、僕にはやっぱり先生のことは女の人には見えないし、先生のお腹が大きくなって赤ちゃんが生まれてくるとこも想像出来ない。
 それに…僕は、レイプされたあの時だけは男の体でよかったと思った。
 輪姦されて妊娠…なんてことは考えたくもなかったから。
「今日はもう寝なさい。寝不足はお肌の大敵ですからね」
と先生に言われてベッドの中に潜り込んでからは、
「圭ちゃんは、これからドールのお仕事でいろんなお客様に抱かれることになります。でも、幸か不幸か圭ちゃんの体は妊娠しない体だから、快楽だけ教えてもらって来なさい。ドールは愛されるものだから。愛されるために存在するものだから…」
と繰り返し耳元で囁く先生の台詞を聞いているうちに僕は眠りに落ちていった。
 快楽なんかいらないけど……
『こんな僕でも愛されることなんかあるの?』
 目尻に湿った感触を感じながら、眠りに落ちる最後の瞬間に自問自答した答えはNOだった。(続く)

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Posted on 2008/07/27 Sun. 14:44 [edit]

『レンタルドールKEI』連載中  /  TB: --  /  CM: --

レンタルドールKEI 25 

 秘密のレッスンはしばらく続いた。
 先生の部屋で時々香るバラの花の香りは、バラのアロマを焚いているのだと教えられた。
 そんなある日、
「圭ちゃん、バラの花の香りは好き?」
と先生に訊かれて、
「はい」
と僕は正直に答えた。
「じゃあ、これをあげようか?」
「なんですか?」
 ガラスの小瓶を手にしてそう言う先生に訊ねてみたら、
「飲む香水。ソフトカプセルの中にバラの香りのエッセンスが入っていて、飲み続けると口臭も体臭も汗もバラの香りになる。これはクラブで使用禁止されていないサプリメントだから大丈夫だよ」
という答えが返ってきた。
 先生に手渡された小さなガラス瓶の中には、黄金色した楕円形のつぶがびっしり詰まっていた。
「飲んだらすぐバラの香りになるんですか?」
「すぐは無理。しばらく飲み続けないと効果は現れないよ」
 僕はちょっと迷ったけど、
「欲しい?」
と先生に尋ねられて、
「欲しいです」
と答えてしまった。
 自分の男臭い体臭を消してしまいたかったし、大好きなバラの花の香りに包まれていればなんだか安心出来るような気がしたからだった。
「最初はプレゼント。次からは通販で取り寄せしてあげるから代金引き換えね」
と言われ、
「ありがとうございます」
と僕はお礼を言った。
 しばらくそのバラのサプリメントを飲み続けて僕の体臭がバラの香りに変わった頃、
「圭ちゃん、すごい上達早いよ!さすが運動神経と身体能力のレベルが高い子は違うね。筋もいい」
と先生にベタ褒めされたらなんだか居心地が悪いような感じがして、
「そんなことないです」
と言ったら、
「普通はこうはいきません。素質だけじゃなくてまじめに圭ちゃんが一生懸命がんばっているから、短期間でここまで上達したんですよ」
と先生は言った。
 僕はレッスンで社交ダンスをそれなりに踊れるようになっていたけど、それが当たり前なんだろうと思っていたから、先生にそんなに褒められるとなんだか照れ臭かった。
 でも、うれしかったからもっとがんばった。
 こんな風に手放しに誉められたことなかったから、うれしくてうれしくてたまらなかったから……。
 どんなにがんばっても褒めてくれなかったお母さんのことをちょっとだけ思いだして泣きそうになったりもしたけど、がんばって結果を出せば褒めてもらえるということは僕のやる気を引き出してくれた。
 そして、僕の異例のドールデビューが決まった。
 通常は初仕事イコール水揚げで、初めてお客様に体を買われることになる。
 けれども、僕は、お客様のパーティーのパートナー役としてのお仕事で、クラブではコンパニオンドールと呼ばれるセックスのお相手無しのドールのレンタルでドールデビューすることになった。
「コンパニオンドールとしてレンタルされる場合は料金が安いので、お客様がその気になってしまっても絶対にセックスのお相手はお断りして下さい。次回通常のドールレンタルでご指名いただくようにして下さいね」
と店長には念を押されていたものの、しないで済むものならしたくないのが僕の本音だから、コンパニオンドールの件を説明された時には「絶対断るって!なんでそんな当たり前のことを念押しされるわけ?」と不思議に思ったりしていた。
 それよりも、今回は、お客様の女性の恋人の振りをして、親が用意した縁談をぶち壊すお手伝いをするとかいうのがお仕事内容なんだけど、僕で大丈夫なのかな?とか不安になっていた。
 僕にはまるで自信がなかった。
 顔は双子の玲ちゃんにそっくりとはいえ、女装した僕は…外に出てもちゃんと女の子に見られるんだろうか?
 ばれたらどうしよう?と思ったら怖くてたまらなくなってしまった。(続く)


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Posted on 2008/07/27 Sun. 18:14 [edit]

『レンタルドールKEI』連載中  /  TB: --  /  CM: --

レンタルドールKEI 26 

 明日はいよいよドールとして初レンタルされる。
 今夜も先生と一緒に寝てるけどなかなか眠れない。
「圭ちゃん…眠れないの?」
と先生に声をかけられ、
「はい」
と答えた。
「むくむとまずいから、お酒飲ませるわけにいかないからなぁ。少し話しようか?」
「はい」
「圭ちゃんは、特別なドールなんですよ」
「特別?」
 先生のおもいがけない台詞に僕は驚いた。
「普通のドールは、ちょっとレッスンを受けたらすぐ水揚げです。その後も次々休む間もなくレンタルされます。圭ちゃんは素質があったし覚えも早かったから、コンパニオンのお仕事に必要なことを最初に教えこみました。単価は枕ドールの方が稼ぎはいいです。ただ、毎日絞り取られて苦痛になってしまったりもします。圭ちゃんの場合はカタカナのゲイじゃなくて、くさかんむりの方の芸を身につけてワンランク上のドールを目指した方がいいと僕も橘さんも判断しました。それで、ダンスレッスン多めにして、ドレスアップした時の立ち居振る舞いや礼儀作法やテーブルマナーも教えました。マナーに関しては、ほとんど教える必要ありませんでしたが……」
と語る先生の口から橘さんの名前が出てぎょっとした。
「なんで橘さんが?」
「あの人、オコゲ歴が長いから、『心は女っていう男』を見抜く目鋭いんですよ」
と言われても僕にはわからない言葉があって、
「オコゲってなんですか?」
と訊いてしまった。
「オコゲはオカマにこびりつくようにしてくっついていることから、お釜の底のおこげとかけてそう呼ばれるようになったらしいんですよ。オカマ大好きな女の子のファンみたいなものでしょうかね?ところが、最近はゲイにくっついてるオコゲもいるんです。僕にはよくわからない人種なんですが……ついでに言うと体操の先生は真性レズビアンですから男には興味がありません」
という先生の答えを聞いてめまいがした。
 この寮内にはまともな性癖の人はいないわけ?
 怖くて「店長は?」と聞けずにいたのに、
「それに、店長は縄師なのにMなんですよ~」
と笑いながら言われても困る~!
「だけど、あの人たちに『薫先生が一番変態!』とか言われちゃうのは、納得いかないんですけどね」
と不服そうに言った名前はどこかで聞いた覚えがあった。
「もしかして先生のお名前は薫さんっておっしゃるんですか?」
「そうですよ。たちば~なかぁおる~♪の薫。橘さんとセットみたいで笑えるけど」
と先生はクスクス笑っていたけど、僕の中では最後のワンピースがはまったパズルが出来上がっていた。
 すべてがつながってどういうことなのか一気に理解してしまった。
 ダメだ!よけい眠れない!!
「先生!ちょっとでいいから寝酒下さい!!」
とおもわず僕はお願いしてしまった。(続く)


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Posted on 2008/07/27 Sun. 21:17 [edit]

『レンタルドールKEI』連載中  /  TB: --  /  CM: --

レンタルドールKEI 27 

 最後のキーワードを得た瞬間、ものすごい勢いで頭の中で記憶の再生が成された。
『昨日も今日も反応無しでした』
『それは単に女性はダメなだけなのか?機能的にまるで使い物にならないのかを確認する必要があるかもしれませんね?出来る仕事が限られてしまいますから』
『いえ…先に薫先生にお願いしてみては?』
『薫先生に?』
『私の勘が当たっていたとしたら、これは薫先生にお任せするのが適当かと……デリケートな問題ですから』
『体の問題に非ずということですか?』
『はい、たぶん……ドールとして生かすためには、今必要なのは屈辱的な検査ではないと思うんです』
『わかりました。まずは、薫先生にお任せすることにしましょう。あなたの勘を信じて』
 クラブの寮に連れて来られて二日目に聞いてしまった橘さんと店長の会話の内容が最初に頭の中で再生された。
 その時の僕には会話の意味がイマイチわかっていなかった。
 でも、ダンスレッスン多めの時間割、薫先生の秘密のレッスン……そして、あの恥ずかしい出来事の前の薫先生の台詞。
『オナニーして見せて下さい』
 次々再生されていった会話の中にキーワードはあった。
 あれは、たぶん、僕が不能か女性にはまったく反応しないゲイなのかを確かめるために検査をしようと店長は言っていたのだ。
 それを止めて橘さんは薫先生に任せることを勧めた?
「秘密のレッスンじゃないじゃないですかぁ」
と僕がちょっと恨みがましくつぶやいたら、
「あれ?もしかして気がついちゃった?圭ちゃん、恥ずかしがり屋さんだから、僕以外は知らないことにしておくつもりだったんだけど……」
と薫先生はケロっとした顔してそう言った。
 僕はカーッと顔が火照るのを感じながら、
「秘密のレッスンのこと、橘さん以外はあとは誰が知ってるんですか!?」
と詰問した。
「このことは、僕と橘さんしか知らないよ。店長は、ダンスレッスン多めにしたその時間内に僕が適切な指導をしていると思っているから」
「本当に?」
「本当に。圭ちゃん、うたぐり深いなぁ。夜な夜な特定の…しかも、水揚げ前のドールと同衾してるのがばれたら、ヤバイの僕の方なんだけど?」
「どうしてですか?」
「前に言ったよね?ドールはクラブの大切な商品だから、スタッフが手を付けてはいけないって」
「はい」
「僕は圭ちゃんとセックスはしてないよね?」
「はい」
「でも、圭ちゃんの体の勃起と射精の確認作業を僕の手でやったことや、圭ちゃんを僕の部屋に呼んで一緒に寝ていることを店長に知られたりしたら、僕が圭ちゃんを犯してしまったんじゃないかって疑われることになる。大人のおもちゃ使ってあれこれしたんじゃないかとか……その場合、僕はクビになります」
と真面目な顔して言った薫先生は、
「犯ってもいないのに割に合わないでしょう?」
と続けて言って苦笑いした。
「さあ、明日はドールデビューなんですから、早く寝ましょう。むくみが出るといけないから、橘さんに今夜は禁酒するように言われてたんだけど、その様子じゃ寝付けないでしょう?今ホットワイン作ってあげますから、それ一杯飲んだら寝なさい」
と言って薫先生が作ってくれたホットワインを飲んでから僕は布団の中に潜り込んだ。
 新たに口止めされてはいないけど、店長にばれないように絶対秘密厳守しなくちゃと思った。
 僕は、恩を仇で返すような真似はしたくはないから……。(続く)


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Posted on 2008/07/27 Sun. 21:58 [edit]

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レンタルドールKEI 28 

 今日はコンパニオンドールデビューの日。
「とてもおきれいですよ」
と橘さんに言われた僕は鏡の前で戸惑っていた。
 エステルームで橘さんにメイクしてもらったんだけど……とにかくすごいの!僕じゃないみたいで!!
 玲ちゃんは、メイクしても素顔とほとんど変わらなかったのに……今のメイクされた僕の顔は本当に別人のようだった。
「化けたね、圭ちゃん。氷の微笑お嬢さまバージョンって感じだよ」
 仕上がりを見にやって来た薫先生にひやかされて、
「これって本当に私ですか?」
なんて間抜けな質問を目の前の鏡指差してしてしまった僕は、
「圭ちゃんだよ。女は化けるっていうけど、ドールはもっと化けるからね。言葉遣いも女声の出し方も動揺していてもちゃんと練習通りに出来ている。これなら、間違いなく女の子に見られるよ。今回は完璧に美しい女性としてお客様の目論見通りのことをやらなければならないからね、がんばって」
と薫先生に言われて益々プレッシャーを感じて緊張してしまった。
「こちらのドレスを着て下さい」
と橘さんに言われてロイヤルブルーの光沢のある布地のロングドレスに着替えたら、
「やっぱりガードル履いた方が良さそうですね」
と橘さんは僕の背後にまわってお尻を見ながらそう言った。
「そうですね。圭ちゃん、小尻だから細工した方がいいかも?」
と薫先生も僕のお尻を見て同意した。
「このガードルを履いてみて下さい」
と言われて僕は橘さんから渡された物を履いた。
 橘さんは、 
「薫先生、スカートまくっておいて下さいね」
と薫先生に声をかけ薫先生が僕のドレスの裾をまくりあげたものだから、なにをされるのかわからない僕はドキドキしながらもとりあえずはおとなしくしていた。
 橘さんは、
「失礼します」
と白い手袋をはめた手をガードルの中に入れて僕のお尻を触ってきた。
「な、なにするんですかっ!?」
 僕はとっさにうわずった悲鳴に近いような甲高い声で詰問してしまった。
 エステの施術で橘さんには裸で全身触れられてはいるけど、なぜか下着の中に手を入れられて触られるという行為に鳥肌が立った。
 一瞬パニック状態に陥りかけたけれどもすぐにそれは終わってほっとした。
「女の子にしてはお尻の丸みが足りないので、補正パッド入りのガードルを履いていただいたのですが、ちょっと履き方がよろしくなかったので直させていただきました」
と橘さんは僕の悲鳴に近かった声にも動じずいつも通りの落ち着いた感じの口調で答えた。
「お尻のラインが男と女じゃ違うから、丸みが足りない分は補正下着でカバーするんだよ」
と薫先生は説明してくれたけど、僕はなんだか悲しくなってしまった。
 股間のいらないモノがなくなれば…とかいう問題ではないのだ。
 あまり意識していなかったけど、お尻とか他にも肉付きの薄い僕の体には女の子の体のような丸みや柔らかさが欠けている。
 それをはっきり自覚してしまったら、こんな体じゃ女の子にはなれないと思ったりした。
 ドールとして働く間、この中途半端な体のままでいなければならないのは仕方がない。
 自分で選んだ仕事だから。
 でも、その先も……僕は女の子にはなれないの?
「靴はこの靴を履いて下さいね」
と橘さんに声をかけられ足元に置かれたヒールを履いた。
 目線の高さが変わった。
 おそらく女性の標準身長と思われる橘さんを見下ろして、
「でかいとか思われそう」
と僕はつぶやいてしまった。
 7センチのヒールは、僕の身長を174センチに底上げしている。
 女の子にしては高いけど、僕自身の167センチという身長は男にしては低い身長。
 だけど、今まで身長にコンプレックスなんて感じたことなんかなかった。
 まさかこんな形で身長気にするようになるなんて思ってもみなかったから変な感じ。
 今の自分がちゃんと女の子に見られる姿であるかどうかが身長も含めてあらゆる面で気になってしょうがない。
「大丈夫、最近は背の高い女性は増えてるし、僕なんか昔はこの身長でセーラー服着て女子高生やってたんだから」
 フォローするかのように頭上から響くハスキーな薫先生の声が降ってきた。
 振り返って背後にいた薫先生を見上げてみたらヒール履いた僕よりでかかった。
 確かにこれでセーラー服はキツイよ、薫先生のような人には特に。
「女優さんみたいに素敵ですよ。最近の女優さんは背が高い人が多いし、そういうドレスは背の低い人にはかっこよく着こなせないんですよ」
と橘さんもフォローしてくれたけど、僕、ほんとに大丈夫なのかな?
 今回のコンパニオンドールデビューは、絶対に男とばれないようにしなければならないし、お客様からのオーダー通りの女性になりきらなければならないお仕事なのに……。(続く)


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Posted on 2008/07/28 Mon. 14:58 [edit]

『レンタルドールKEI』連載中  /  TB: --  /  CM: --

レンタルドールKEI 29 

 仕上げにウイッグを被せられてロングヘアーになったら、鏡の中の僕はほんとに僕じゃないみたいだった。
 ネット被って地毛をまとめてから、被ったウイッグの内側からパチンパチンと留められて地毛にしっかりとウィッグは固定された。
「よほどのことがなければずれたりしませんから、安心して下さいね」
と橘さんは言った。
 僕を迎えに来た店長は、
「才色兼備の美女という設定にぴったりですね。とてもきれいですよ」
とお世辞を言った後、
「今回のお仕事については、前回資料を渡して説明しましたが、把握出来ていますか?」
と訊ねてきた。
「はい」
と僕は答えた。
「ドール名は、アルファベット表記でKEIで年齢は18歳の設定ですが、今回は、速水マヤ、22歳の帰国子女という設定ですよね?」
「そうです。お客様の恋人の振りをして縁談を破談にするのが今回のお仕事なわけで、セックス無しのオーダーです。もしもお客様がその気になってもお断りして下さい。あなたはまだ水揚げ前の身なんですから。水揚げの方は高値でご予約いただいてますから気をつけて下さいね」
という店長の台詞の内容にずんと気が重くなった。
 今回のコンパニオンドールデビューの後に、いよいよ水揚げで男に抱かれなくてはならないのだ。
「はい」
と答えたものの今日のお仕事もその後の水揚げのことも不安だった。
 だけど、
「圭ちゃん、笑って、笑って」
 そう言ってヘン顔している薫先生を見たらおもわず吹き出してしまった。
「そう!そうやって笑っていなさい。圭ちゃんは笑うとかわいいんだから」
と薫先生に言われたけど、緊張して顔が強張っちゃうよ。
 それに、たいてい「冷たい顔」と言われる僕の顔がかわいいわけがない。
「さあ、行きますよ」
と言われて僕は店長の後をついてエステルームを出た。
 このクラブの寮に連れられて来た日以来、初めての外出。
 しかも、初めて女装して出かけるのだ。これで緊張しないわけがない。
 玄関前に止められていた車に乗ったら、店長は僕のウィッグの髪が乱れないように気をつけながら僕の目の上にアイマスクをつけた。
 たぶん、ここの場所を知られたくないのだろう。
 初めてここに来た日もアイマスクするように言われた。
 ここがどこなのかはわからないし、これから連れて行かれる場所も知らない。
 自分の心臓の音がやたら大きく聞こえるような気がしていた。
 ドールデビューの初めてのお仕事をちゃんと出来るかどうか不安で仕方がなかった。
 そんな僕は、この日運命の出会いが待ちうけているとは思ってもみなかった。(続く)


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Posted on 2008/07/28 Mon. 18:19 [edit]

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